トランプは台湾や尖閣諸島を防衛をやめるのか
トランプによるグリーンランドとベネズエラを巡る言動は何を意味するのか。それは、これまでの戦後秩序の中でアメリカがとってきた「防衛的保障者」からの転換ということができる。この転換は、国境防衛をアメリカに依存する日本を含む国にとって、「実存的な問い」を突きつける。
トランプがグリーンランド併合やベネズエラ介入を公然と論じるなら、習近平も台湾や尖閣諸島に手を出す行動に出るのではないか。その際、トランプはどう対応する気なのか。
日本国民が抱くのは、根拠のない不安や恐怖ではない。トランプの領土的野心がアメリカの優先順位について何を示しているかを冷静に見極めた結果である。
非対称な依存という現実
日米同盟は対等な協力関係ではない。日本が基地提供、財政支援と引き換えに、ハードセキュリティをワシントンに外注している仕組みである。アメリカの同盟防衛者としての信頼性が揺るがない時代には、この構造は見事に機能した。
だがトランプのグリーンランド発言はその信頼性を致命的に粉砕する可能性がある。アメリカが、戦略的に都合が良ければ同盟国の領土奪取に前のめりになった時、ほとんどのアメリカ人が地図上で位置を示せない「8つの無人岩礁」(尖閣)のために体を張って防衛するだろうか。
グリーンランドへの領土的野心を示したトランプの頭には北極戦略という文脈がある。グリーンランド獲得を「国家安全保障と世界中の自由」のために必要だと位置づける。
だが国家安全保障が北極での同盟国領土併合を正当化するなら、中国は台湾や尖閣(釣魚島)に対して寸分違わぬ論理を主張できることになる。北京は長年、台湾が核心的領土保全を代表し、尖閣(釣魚島)が歴史的に中国に属すると主張してきた。トランプのグリーンランド言説は北京に完璧な修辞的テンプレートを提供する。論理構造は完全に同一なのだ。
ベネズエラの事例は別の角度から懸念を深刻化させる。トランプが嫌悪する体制転覆のための軍事介入は国際法、地域諸国の反対、主権規範を無視したものである。アメリカの武力行使が一貫した原則ではなく大統領個人の判断に従うことを如実に示している。
日本の安全保障は、アメリカが同盟国を防衛するのは同盟関与が不可侵の原則を体現するからだという前提の上に成り立っている。だがトランプがマドゥロを嫌うからベネズエラを爆撃する一方、尖閣は「ただの岩」だから必ずしも防衛しないというなら、日本の安全保障は完全にトランプの瞬間的判断に左右されることになる。それはもはや同盟とは呼べなくなってしまう。

