入浴する時、どんなことに気をつければいいのか。医師の早坂信哉さんは「浴槽で亡くなる人は交通事故の死亡者より多い。主にヒートショックが原因だが、これは全年代で起こりうる。入浴する前後にできる対策があるので徹底してほしい」という――。(第4回)

※本稿は、早坂信哉『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』(アスコム)の一部を再編集したものです。

お湯を張っているお風呂
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです

風呂場の死亡事故は「交通事故」より多い

消費者庁のデータによれば、2021年の1年間に交通事故で亡くなった65歳以上の高齢者の数は、2150人。対して、入浴中の溺死や溺水の数は5097人です(消費者庁「高齢者の不慮の事故」)

つまり、交通事故で亡くなる方より、浴槽で亡くなる方のほうが圧倒的に多いのが現状なのです。この上なく手軽で、健康になれる入浴ですが、入り方を一歩間違えば死亡事故につながるということも、ぜひ覚えておいてください。

死亡につながる入浴中の体調不良というと、脳卒中や心筋梗塞を思い浮かべるかもしれません。確かに、これらは入浴中の死亡事故の主な原因です。急激な温度変化による血圧の乱高下が引き金となり、心臓や脳の血管に負担がかかり誘発されます。一般に「ヒートショック」と呼ばれています。

また、高温の湯に長時間浸かることで体温が過剰に上昇し、脱水や意識障害など、熱中症と同様の症状を引き起こす「浴室内熱中症」というものがあります。こちらも、入浴中の死亡事故のリスク要因の1つと考えられています。

入浴関連の死亡者数は「年間1万9000人」と推定

ところで、冒頭で挙げた入浴中の死亡者は直接の死因が「溺死・溺水」に限った場合です。脳卒中や心筋梗塞では? と思われたでしょうか。

実は、入浴に関連した脳卒中や心筋梗塞の多くが浴槽の中で起こると考えられ、意識を失いお湯に顔がついてしまい溺死、ということになるのです。溺死だけでなく、入浴に関連した病死なども含めた死亡者数は2012〜2013年の厚生労働省の研究班による調査では、年間1万9000人と推定されています。

私たちの調査では、入浴10万回あたり2~3回程度の割合で、体調不良が起きることが確認されています。しかし、入浴は多くの方が毎日行う生活習慣です。

例えば昨夜も1億人くらいの方が、湯船に入ったかもしれません。入浴という行為そのものが多くなされれば、一定の数の入浴事故が発生してしまいます。そこで本稿では、入浴を「安全な健康習慣」にする心得をお伝えします。