夢を見ている間、脳内では何が起きているのか。筑波大学の櫻井武教授は「夢は、感情と記憶のネットワークを再編集し、意識の自己像を調整している。夢の断片の中に、ふとしたひらめきが紛れていることがある」という――。

※本稿は、櫻井武『意識の正体』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

夜見る夢は、どうしてヘンなのか?

本来、覚醒中には前頭前野が情報を補足しながら、秩序だった世界を構築する機能を発揮している。

しかし、その機能がレム睡眠中には停止しているため、夢の中では無秩序な出来事が発生する。夢の中では、因果律や時間軸が崩れる。登場人物が入れ替わったり、自分が複数の存在になったり、死んだはずの人が現れたり……。

ファンタジーの風景の中に立っている女性
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夢の中では何が起こっても決して不思議に感じないが、目覚めた後、夢を思い返すと「おかしな夢を見たな、今のは何だったんだろう?」と思うだろう。前頭前野が活動を開始した結果、論理だった思考ができるようになるからだ。

だが、その不可解さこそ、夢が現実の意識構造とは異なるルールに基づいた「もうひとつの知覚モデル」であることを示している。

夢は、感情と記憶を再編集している

しかし、この変容した意識は、現実から切り離された自由な想像の場を提供する。現実では抑圧された欲望や恐れ、解決されない記憶の断片が、象徴的なイメージとして浮かび上がる。

精神分析学の父ジークムント・フロイトは、夢を「無意識の王道」と呼び、精神活動を理解するものとしてその内容を重視した。夢は潜在的な感情や葛藤を象徴的に表現する場であると考えた。

一方で、現代神経科学は、夢のステージであるレム睡眠を記憶の再編や情動(感情)の調節機構として捉える視点を重視しており、夢の内容そのものを解釈することにはこだわらない。夢は、感情と記憶のネットワークを再編集し、意識の自己像を調整する“編集室”のような役割を果たしているという考え方もできる。