手帳の選び方、1週間の組み立て方法、自分の軸のつくり方……。時間管理の達人たちが試行錯誤の末にたどりついた実践的なテクニックと、その背景にあるセオリーを披露する。

▼大越健介さんのメソッド

じつをいうと、自分で時間管理している意識は、あまりありません。現場の記者だったころは、365日が臨戦態勢。取材も相手の都合に合わせて動くので、事前の予定はあってないようなものでした。いまは自分で企画を提案したり、担当ディレクターや記者の要請を受けて現場にいくことも多いので、記者時代ほどではないですが、自分で予定を管理するというよりも、やはり時間の中に身を置いている感覚に近いです。

ただ、自分が手がける仕事は、インタビューにしてもロケの取材にしても、今日性とニュース性があり、納得できるものであることを大前提にしています。そのため、どんな企画でも立案段階から、担当者と話し合いをして取材・制作を進めます。納得感がなければ単に流されているだけになり、やらされ感へとつながっていきますから。

ずっとこうしたスタンスで仕事をしてきたので、今日はオン、明日はオフという明確な区別はしていません。基本的には毎日がオン。必要があれば、土日も取材に出かけています。

それでも続けてこられたのは、オンの中に小さなオフを混ぜてきたからでしょう。たとえば放送中も、やわらかい内容のVTRのときはリラックスしながら見て、横に座る井上アナに冗談を飛ばしたりしています。そうやって普段から緩急をつけているので、オフの日をつくらなくても大丈夫なのだと思います。

ひょっとすると、野球をやっていたことと関係があるのかもしれません。ピッチングは緩急が命。ピッチャーはつねに全力投球ではなく、相手との間合いを測りつつ、カーブやチェンジアップをうまく織り交ぜながらバッターを打ち取っていきます。高校・大学と野球漬けでしたから、ほどよい緊張感の中で息を抜く術が、いつのまにか身についたのかもしれません。

大越健介(NHK「ニュースウオッチ9」キャスター)
1961年生まれ。東京大学卒業。東大野球部では投手として活躍し、83年には日米大学野球選手権大会の日本代表選手に初めて東大から選出。85年NHK入局、政治記者を16年務める。ワシントン支局長、「ニュースウオッチ9」編集責任者を経て、2010年より現職。