これまで快適分野、電動化分野、安心・安全分野に、個別展開してきた製品を、システムとして練り上げ、“価値のあるソリューション”として提案していくのが、AIS社という新たな組織の狙いだ。

実は、パナソニックの社内には「試作車」と呼ばれるクルマが存在する。市販されたEV(電気自動車)をベースに、パナソニックのシステム製品を組み込んだクルマに改造し、品質や耐久性などの実験を繰り返しているのだ。自動車メーカーさながらの取り組みからも、パナソニックのシステム提案の本気度が伝わる。

さらに山田社長は、

「Tier1のビジネスは18年までに2倍以上の成長を見込むが、Tier2、Tier3でも2倍の成長を計画している」

とし、熱に強い基板をつくるための「材料」や、センサーなどの「部品」を、パナソニックならではの商品として、サプライヤーに積極的に供給していく。

自動車関連事業の中で注目すべきは、AIS社の中に設置された新規事業本部だ。山田社長が兼務で本部長を務める組織で、「年間100億円、5%以上の利益率が見込める事業の創出」を目指す。約400人の人員のうち、半分が自動車関連事業に携わることになる。

津賀社長から示された、「18年度までに2兆円」という同事業の倍増計画について山田社長は、こう自信を見せる。

「市場の成長性、環境の変化、そしてパナソニックの事業体制が大きく変わったことを考えれば、“やらなくてどうするんだ”という数字。これから3年間のビジネスはほとんど決まっている。今はその3年後以降のビジネス、つまり、16~18年に向けた商談を始めているところ。強い手応えを感じている」

(宇佐美雅浩=撮影)
【関連記事】
パナ、ソニー、シャープ、生き残るのはどこだ
レノボ、HP……PCメーカーの「Made in Japan回帰」はなぜか
「ガンダムの経済学」なぜ不況下で最高益なのか?
<富士フイルム>本業崩壊、生き残りをかけた変革の12年【1】
製造業本社の「海外大移動」が始まった【1】