もう“家電”メーカーとは呼ばせない。パナソニックがいま、大きく変わる。自社製品をつなぐ“まるごと”戦略は、家からついに街づくりにまで発展している。急遽、三洋電機、パナソニック電工を完全子会社化して、その次に目指す先とは……。
これら、省エネ、創エネ、蓄エネの機器をつなぎ最適制御化するのが、スマートエナジーシステム(SES)だ。同工場では、自然エネルギーの利用率を高め、CO2排出量を年間約2480トン減らすことが可能。これは加西工場と同規模の工場が排出する二酸化炭素の量約25%分に相当する。
「いまの生活、快適さ、利便性を維持しながら、そのままCO2を25%削減できるツール、それがSESです。これを世界に広げることにより、日本は地球を救うリーダーになれると思っています」(三洋電機エナジーソリューション事業統括部事業統括部長・花房寛氏)
SESがもっとも効果を発揮する市場はアメリカだという。特に大型蓄電システムなどの利用価値は高い。
「アメリカには電力会社が3000社もあります。その電力会社に対して、太陽電池や風力発電の設置を政府が後押ししている。しかし、太陽光や風の強さは一定でないため、さまざまな問題が発生している。そのため、例えばカリフォルニア州では、電力会社に対してエネルギー貯蔵設備の導入を義務づけました。つまり“大型蓄電池”を入れろということです。そうした動きは他の州にも広がっていく。三洋にとってはビジネスチャンスです」(花房氏)
三洋が得意とする太陽電池が売れれば、それに伴って大型蓄電池もセットで必要とされる。さらに、エネルギーの最適化となると、SESの出番となる。
しかし、サムスンやLG、中国のBYDなど、リチウムイオン電池のシェアを急速に伸ばしているライバルメーカーの存在も無視できない。彼らの事業に取り組むスピード感は、日本企業の比ではない。エネルギーマネジメントの市場をいち早く押さえるためにも、先手を打ち、アメリカ攻略を急ぐ必要がある。
「三洋のSESをオープンプラットホームで提供する。これを土台(プラットホーム)にしてさまざまな企業にいろいろなシステムを開発してもらう。話題のアップル社のiPhoneではないですが、土台はアップルが提供し、アプリの開発は誰でも自由にできる。そこにさまざまなビジネスモデルやビジネスチャンスが生まれている。SESをオープンプラットホーム化し、世界中に仲間を増やす。その結果がCO2削減で地球を救うことにつながる」(花房氏)
自社のシステムをオープンにする発想は、非常におもしろい。三洋は、20年の大型蓄電の世界市場を控えめに見ても2兆円規模と想定している。アメリカ市場は、「5年程度で5000億円市場になる」と花房氏は予測する。三洋のSESが評価されれば、利益は後からついてくる。街や工場、家まるごとどころか“市場まるごと”の可能性もある。