もう“家電”メーカーとは呼ばせない。パナソニックがいま、大きく変わる。自社製品をつなぐ“まるごと”戦略は、家からついに街づくりにまで発展している。急遽、三洋電機、パナソニック電工を完全子会社化して、その次に目指す先とは……。
「三洋電機およびパナソニック電工に対するTOB(株式公開買い付け)は、10月6日に完了しました」
10月29日、2010年度上半期の決算発表の席上、パナソニックの大坪文雄社長は、三洋電機(以下、三洋)とパナソニック電工(以下、電工)を完全子会社化するTOBが順調に進み、子会社化が完了したことを宣言した。
パナソニックが両社の完全子会社化の方針を決定したのは、7月29日のことだ。その後、TOBを行って両社の株を取得。応募がなかった株はパナソニック株と交換取得し、11年4月1日付で、両社の完全子会社化を完了するスケジュールを組んでいる。
18年に創業100周年を迎えるパナソニックにとって、両社の完全子会社化は、“次の世紀”を占ううえで戦略上、極めて重要な意味を持つ。
10年5月7日に行われたパナソニックグループの12年度までの新中期計画(GT12)のアナリストへの説明会で、大坪社長は「12年度までは電工や三洋との資本関係はこのまま」と述べている。ところが、その2カ月後に両社の完全子会社化が突如発表された。いったい何が、パナソニックの方針を変えたのか。
「三洋を加えた新パナソニックグループとして、エレクトロニクスナンバーワンの環境革新企業になるというビジョンの実現に向けた最初のステップを刻む。それが今回の中期計画です。成長への大胆なパラダイム転換と、環境革新企業の基盤づくりという2つのテーマに取り組み、12年には成長力あふれるパナソニックグループになることを目指す」
GT12の記者発表で、大坪社長はこう語っている。そして、「成長へのパラダイム転換」について、次のように述べた。
「(1)(家電など)既存事業偏重からエナジーなどの新領域へ、(2)日本中心から徹底的なグローバル志向へ、(3)単品志向からソリューション・システム志向へ、これら3つの転換に取り組んでいく」