もう“家電”メーカーとは呼ばせない。パナソニックがいま、大きく変わる。自社製品をつなぐ“まるごと”戦略は、家からついに街づくりにまで発展している。急遽、三洋電機、パナソニック電工を完全子会社化して、その次に目指す先とは……。
中国では、いま急速な経済発展にともなう都市化により、電力消費量が急増し、水不足も慢性化している。このため都市化によるエネルギーや環境問題の解決策として、スマートグリッド(次世代電力網)を導入し、再生可能エネルギーや水の循環利用などを積極的に取り入れた街をつくろうという動きがある。これが、中国政府が進める「エコシティ・プロジェクト」である。
その一つが天津エコシティだ。ここでパナソニックは、日立製作所と組んでプロジェクトに参画している。エコシティの一部区画で、地域のエネルギーマネジメントは日立が、家の中はパナソニックがHEMSを導入して、エネルギーマネジメントを行う。家の中のマネジメントは、まずはエアコンだという。
「中国では、電力消費が増えていますが、その一方で、電力供給が追いついていない。そこで、昼夜によって異なる『電力ピーク』を抑えていきたいニーズに注目しました。電力ピークを抑えることは、発電所建設を抑えることにつながります。
電力を使う側は、省エネ、供給側は電力消費をコントロールできるという仕組みを構築する必要があります。例えば、これをダイレクトコントロールできる一例が、エアコンです。エアコンのオン・オフを細かく制御することで、きめ細かな電気使用の“見える化”を実現化する。将来的には家電製品や照明なども制御するマネジメントシステムを導入することになるでしょうね」(パナソニック エナジーソリューション事業推進本部理事・天野博介氏)
エコシティ・プロジェクトは、中国全土13カ所で進んでいる。さらに自治体レベルでは100以上のエコシティ建設の構想がある。家、ビル、店舗、街まるごとエネルギー管理するのが特徴だ。パナソニックとしては、天津を足がかりに、中国全土での展開を目指すという。