脱・白物家電、「BtoB」事業に集中投資の勝算は――。2期連続で計1兆5000億円を超える最終赤字、63年ぶりの無配。パナソニックが置かれた立場は、「瀕死」の状態だ。そこからの復活に津賀社長が懸けたのは、得意の「白物家電」とはまったく異質の分野だった。
住宅の見えないところにもパナソニック
自動車関連事業と並んでパナソニックが力を注ぐ「住宅関連事業」を担うのが、ES社だ。
今年6月にパナソニックES社社長に就任した吉岡民夫氏は、こう切り出す。
「テレビをはじめとするデジタル事業とは対極にあるのがES社のビジネスモデル。パナソニックが長い年月をかけてつくり上げた技術と製品、強い販売網を生かして、パナソニックグループの成長を牽引していく」
ES社は、照明などを担当する「ライティング」、ソーラーシステムなどを取り扱う「エナジーシステム」、水回りや内装などの事業を行う「ハウジングシステム」、空気清浄機や換気扇といった製品を担当する「パナソニックエコシステムズ株式会社」の4つで構成されている。さらに、アプライアンス社の省エネ設備や店舗向けショーケース、AVCネットワークス社のドアホンやセキュリティカメラなどの商品群も、ES社が持つ電材、住建ルートを通じて販売する役割を担う。
今回のパナソニックの中期経営計画では、すべての事業で営業利益率5%以上を目標にするが、ES社では他のカンパニーから調達して販売している商品を除くと、すでに5.6%の営業利益率を達成し、すべての事業が黒字化するなど、パナソニックの中では優等生的な存在だ。
そして、パナソニックの創業商品である“配線器具”は、ES社の担当である。
「創業時の1918年から販売しているアタッチメントプラグは、今でも月間5000個を販売している」(吉岡社長)
住宅関連事業の現在の事業規模は約1兆1000億円で、これを18年度には約2倍の2兆円に拡大する計画だ。住宅関連事業の中で、現在のES社が占める事業規模は約8000億円で、18年度には1兆5000億円を担う予定だ。