キャラクタービジネスに強い企業といえば、バンダイナムコホールディングスの名が挙げられる。前期は国内市場における売り上げが好調で、過去最高益も噂されたほどだった。

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右肩上がりのガンダム

日本国内の玩具市場は難しい市場だ。たとえば、「たまごっち」の国内・海外向けの売り上げを比較してみるとよくわかる。海外は比較的ブームが続くが日本は続かず、1~3年で売り上げが激減する。その中で、バンダイナムコが高い利益をあげられるのは、過去のキャラクターが稼いでいるからだ。

バンダイナムコは他社の版権を使ってキャラクタービジネスを行っており、自社発のキャラクターはそれほど多くない。結局、同社のやっていることは「問屋」だ。キャラクターを他社から買ってきて、それを玩具に仕立て上げ、テレビ放送と合わせて売る――これを延々繰り返している。たとえば、機動戦士ガンダムやドラゴンボール、仮面ライダーや戦隊ヒーローシリーズなどがそれで、何十年も前からある「過去のキャラクター」でもある。

どんなキャラクターでもそれができるわけではない。たとえば、タカラトミーの「リカちゃん」は、独自の世界を持ち、長年愛されているものの、テレビには向かない。ゲーム向き、映画向き、テレビ向きのキャラクターは全部別。これを見極めるノウハウがバンダイナムコには蓄積されている。

ただ、どのキャラクターがいつだめになるのか、あるいは急に人気が出たり復活したりするかは、予想が難しい。バンダイナムコの前期決算では仮面ライダーの売り上げが復活したり、「ワンピース」の人気が急上昇した。一方、「ドラゴンボール」はさっぱりだめになってしまった。ずっと売れているように見えるガンダムも、手を替え品を替えで売り上げを維持している。

写真=ロイター/AFLO

では、なぜ「過去のキャラクター」は長い間にわたって利益を生み出せるのか。それはひとえに「続いているから」である。たとえば、ガンダムのプラモデル(ガンプラ)で説明しよう。プラモデルを作る際にとった金型はすぐに減価償却するため、同じ金型でプラモデルを作れば作るほど利益が出る仕組みなのである。長く続けていればこそ、利益を出しやすくなるわけだ。

ソーシャルゲームを見ればわかるとおり、キャラクタービジネスでも、荒稼ぎをしようと思えば簡単にできるし、そういった会社もたくさんある。だが、同社は、何万円もするようなガンプラをバンバン売ってしまうと、評判が悪くなることを知っている。小学生でも買えるよう、ガンプラは1000円以下のものが大半であるわけだ。

ガンダムのように、ヒットするキャラクターを作りたいと思ったら、気長にやることだ。ヒットしなくてもそのままおいておくと、10年後にようやくそのキャラクターに時代の空気が合ってきて、息を吹き返す場合がある。サンリオの「シナモロール」などがそれだ。

また、親が安心して与えられる玩具であるということは、とても重要なことである。その意味では、社会的に批判が強まりつつあるソーシャルゲームのキャラクターを扱うことは、非常にリスクが大きいと言えるだろう。

(構成=相馬留美 撮影=和田佳久 写真=ロイター/AFLO)