この4月から三菱UFJフィナンシャル・グループ社長に就任。三菱東京UFJ銀行頭取も兼務する。昨年来、メガバンクを取り巻く競争環境は激変。グループトップとしての舵取りを聞いた。
グループ力を発揮して、持続的に成長する
――去年の12月には民主党から自民党への政権交代があり、年が明けて、アベノミクスが始動した。前期業績を含めて、どう総括しているか。
【平野】前年度からは新中期経営計画がスタート。中長期の経営ビジョンに「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」を掲げ、顧客基盤の強化に取り組んできた。そのなかで2013年3月期のグループ決算は、純利益8526億円。まずまずの好決算だが、それを支えたのは国債などの債券売却益だ。加えて、期末にはアベノミクスへの期待感で株高が進み、これがプラスに働いた。
しかし、これらは一過性のもので、長続きはしない。国債にしても長期金利の上昇で売買益は減るだろうし、国内の貸し出しも依然として低迷している。やはり、いちばん大事なのは持続的成長だ。私どもとしては、リテール、法人、国際、受託財産、市場の各事業分野で、顧客とのリレーションシップを深化させたいと考えている。幸い、金融市場には活気が戻り、投資信託など運用性商品の販売も拡大してきている。ここからは持てる力を本当に引き出せるかどうかが課題で、グループ力をさらに発揮していく。
――しかし、順調に進んできたアベノミクスにしても、5月末には株価の下落があり、まだ評価は定まらない。
【平野】大規模な金融緩和は短期的には株価や長期金利の乱高下などマイナス面もあるが、そこは日銀のオペレーションを見守るしかない。2%をターゲットにして“適正なインフレ”が実現できれば、中長期的には、企業や個人の資金需要を掘り起こすはずだ。
いま国内は、少子高齢化による潜在成長力の低下といった課題を抱える。それだけに、ここでまとまった成長戦略の実効性を高めていくことが重要だ。具体的には、医療、環境・エネルギー、農業などだろう。そうした成長産業で優秀な技術を持っている企業に、我々も金融グループとしての役割を果たしていきたい。
一方、海外についてはアジアや欧米への日本企業の進出支援だ。先日、安倍晋三総理がミャンマーを訪れた際、港湾と工業団地を備えた「ティラワ経済特区」にインフラ建設を中心に日本企業の専門技術を売り込むと伝えられた。今後は、そうした企業をグループで支援していく。典型的な方法がプロジェクトファイナンスだが、当社は昨年、この融資で世界首位に立った。
さらに、忘れてはならないのが、成長戦略を加速させるのが規制改革だということ。日本は無資源国だといわれるが、教育の行き届いた労働力があり、高い技術力を誇る。こうした強みを、法律やルールを見直すことで成長分野にシフトしていくことが重要だ。TPP(環太平洋経済連携協定)への加入も同様の視点で考え、正面から取り組んでいく必要がある。