超円高下でも利益が出せる「モノ造り革新」という業務改革活動に取り組むマツダ。長年、その旗振り役を務めてきた小飼雅道社長に、付加価値のあるブランド商品づくりと海外展開などを聞いた。
マツダ社長兼CEO 
小飼雅道氏
――低燃費や走行性能を高めた独自の環境技術「スカイアクティブ」搭載の第3弾となる新型「アクセラ」の予約販売の受け付けが始まりました。(13年10月時点)

新型アクセラの発売は11月21日からですが、2003年に初代モデルを発売してから世界120カ国、370万台以上を販売し、全世界における販売台数の約3割を占めています。3代目となる新型モデルは国産車として初めて、同一車種でガソリン、クリーンディーゼル、ハイブリッドの3つのパワートレーンを設定して、新しい成長を切り開く重要車種と考えています。国内では現在、年間3万6000台の販売を目標としていますが、どんな比率になるのかが読みづらい。きちんとした生産計画が立てられなければ、納車のタイミングでお客様にご迷惑をかけるため、このように予約受注を早めて対応することにしたのです。

――先日の新車発表会では、「ダイナミクス、環境、デザインなど、あらゆる領域で新生マツダの魅力のすべてを結集した」と話されました。

あまり自信過剰になってもいけませんが、スカイアクティブは「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」を両立させたテクノロジーの総称で、デザインの領域までも含まれます。ブランド価値を強化するためのデザインの統一も、一目見てこのクルマに乗ってみたいという強烈なインパクトを与えることが大切です。そのために一切の妥協はしません。例えば、イメージカラーのソウルレッドにしても単なる赤ではなく鮮やかな真紅でなければ駄目です。例えて言えば、マツダの車が自宅のガレージに置いてあるだけで、家が生き生きと映えてくるのが理想です。

――小飼社長は生産技術畑の出身です。

これは一般的な話ですが、他社ではデザイン部門の担当者が図案を見せても、生産現場では頑なに拒否するケースもあると聞いています。マツダも以前は、組織の間に壁があって受け入れないことがありました。でも、今は違います。3年先に立ち上げる新車開発でも、生産部門のスタッフも企画の段階から一緒にプロジェクトに加わり、検討を重ねます。設計図が出来上がってからプレス加工ができないと判断していては、手直しにコストも時間もかかる。生産と開発が早いタイミングで一体となって一緒に取り組めば、困難なデザインでも解決できる。逆に生産の立場から企画に対して、こんな金型の成形だってできるよ、と提案することも可能です。