仕事の視野を広げるには読書が一番だ。書籍のハイライトを3000字で紹介するサービス「SERENDIP」から、プレジデントオンライン向けの特選記事を紹介しよう。今回取り上げるのは堀越耀介『職場の共通言語のつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)――。
オフィスで朝礼をするビジネスパーソン
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです

イントロダクション

「部下への指示がうまく理解されず、意図通りに動いてもらえない」「会議での議論がかみ合わない」といった悩みを抱える会社は少なくないだろう。

こうした職場のコミュニケーション不全は、業務の効率化やイノベーション、さらにそれらによる企業の成長を阻むことになりかねない。どうすればいいのだろうか。

本書では、数々の企業の組織変革を支援してきた「哲学コンサルタント」が、しばしば発生する「同じ言葉を使っているのに意図通りに伝わらない」状況に対し、「哲学対話」によって「共通言語」をつくり出すメソッドを紹介している。

著者のいう共通言語とは、メンバー全員の中で「意味と具体的なイメージが共有され、コミュニケーションと行動の基盤となる言葉」を指し、既存の言葉に対し「そもそも○○とは?」といった哲学的問いをもとに対話したり、その上で新しい言葉をつくったりすることで生まれるものだという。

著者は、東京大学 共生のための国際哲学研究センター 上廣共生哲学講座 特任研究員。数々の有名企業に対し「哲学」と「対話」によって組織の潜在能力を最大限に引き出すコンサルティングを実施。また、ShiruBe(哲学クラウド)でコンサルタント/上席研究員を務め、電通と研修プログラムの共同開発を行う。

はじめに 職場の「言葉の壁」を乗り越える
1.なぜ共通言語が重要なのか
2.共通言語づくりの型
3.共通言語をつくる「思考」の技術
4.共通言語をつくる「対話」の技術
5.共通言語が生まれる文化をつくる
おわりに 対話の力で企業は変わる

話し方や聴き方のテクニックだけでは解決できない

「責任」「価値」「主体性」「イノベーション」──ビジネスの現場でよく使われるこうした言葉は、誰もが知っているようで、実はそれぞれ異なる意味やニュアンスで使われています。言葉そのものは同じでも、使い方や受け止め方がまったく違う。だから、言葉は飛び交っているけれど、それが通じ合っていない。これが、組織におけるコミュニケーション不全の原因です。

たとえば、「主体性」という言葉。部下は「指示がなくても自分で考えて行動すること」と捉え、「失敗したら責められる」というネガティブなイメージを持っているかもしれません。一方、上司はそれを「組織の目的を理解し、自ら課題を見つけて挑戦すること」と捉え、「成長につながる」とポジティブなイメージを持っているかもしれません。

このようなギャップは、「話し方」や「聴き方」のテクニックだけでは決して解消されません。重要なのは、「言葉の意味とイメージを、どのようにしてチーム内で共有していくか」です。つまり、どのようにして共通言語をつくっていくかにかかっています。