若手社員の扱い方が分からず悩む上司層は多い。Z世代の生態を研究する経営学者、舟津昌平氏は「例えば若者から飲み会に行く意義について尋ねられたら。まずは飲み会離れの背景に何があるか、正しく理解する必要がある」という――。
※本稿は、舟津昌平『若者恐怖症――職場のあらたな病理』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
あのとき社会の敵になった「酒」
若者と飲み会を語る時代背景として欠かせない要因がある。コロナ禍である。お酒の消費量は、2019年から2020年にかけて激減とまではいかずとも過去より大きなペースで減少した。「コロナ世代」、つまり2020年度に学校生活を経験、特に大学に入学した学生は飲み会文化を比較的経験できていない。職場の飲み会を肯定的にとらえる意見として次のような声も見受けられる。
「自分が大学のときはコロナで全然飲み会ができなかったので、むしろ会社で経験できるのが楽しみ」
飲み会の舞台となる居酒屋はコロナ禍初期に真っ先に「社会の敵」になった。酒を飲んで会話することが犯罪のように扱われ外食して飲み歩く著名人がどんどん摘発された。いま考えてもゾッとする異常な社会である。「飲み狩り」がほとんど省察されず、社会が半ば意図的に忘却したことに筆者は恐怖を覚える。
「ワケわからん若者」が生まれた理由
若者が飲み会離れしているとしたら、酒を飲まなくなっているとしたら、それは若者の自主的で自由な行動変容ではなく、社会やオトナがそうさせているのではないだろうか。
若者恐怖症に紐づく言説はいずれも、エイリアンである若者がワケわからん言動をするというイメージに基づいている。ただそのワケわからん言動の根源は社会構造にあるんじゃなかろうか。「最近のわけぇのは飲み会誘っても来ないんだよねえ」と嘆いて不思議に思うとして、原因はオトナ側がつくっている可能性が高いはずだ。

