ブレーキとアクセルを同時に踏むような「経済重視」の対応

これまで、政府のコロナ対策によって感染拡大の推移パターンに差が出たと解釈してきた。

あらためて要約すると、ヨーロッパでは当初の感染拡大に対して大きくブレーキを踏んだため、すぐに第2波は訪れず、だんだんと対策が緩んだ秋になって第1波を大きく上回る第2波に襲われた。

米国や日本では、当初の感染拡大に対してブレーキは踏んだものの、危機感がヨーロッパほどではなかったので、すぐさまブレーキとアクセルを同時に踏むような「経済重視」の対応に転じた。このため、夏場には第2波が訪れ、これに対しても同様の対応をしたため、一度沈静化した後、その後、再度、第3波に襲われている。

ヨーロッパの中でもスウェーデンはヨーロッパの中でも独特な考え方の感染拡大対策を採ったので日米と似た3波構造となっている。

ラテンアメリカやインドといった途上国では、ヒトの移動がそれほど頻繁でないのに加え、感染拡大への危機感が先進国ほどではなく、対策が講じられるのも、それが効果をあらわすのも先進国地域と比較してかなり遅れた。このため、これまでのところ感染拡大は1波の構造をもっている。

コロナ流行に対して案外すぐ緩んだ日本人の危機意識

政権トップ、あるいは政権内のコロナ対策司令塔の方針によってこうした差が出ているようにも見えており、特に、政権批判によって信任を得ている報道機関はそういう見方に偏りがちであるが、政権の方針は国民の危機感を反映したものであるにすぎない可能性もある。そこで、日本人の危機意識の推移についてデータを見てみよう。

コロナ流行に対する危機感を月次調査などでこまめに直接に追っている意識調査はない。しかし、内閣府が景気判断のために毎月15日現在の国民意識の状況を定期的に調べている「消費動向調査」の中で「今後半年間の暮らし向きの展望」を聞いた設問があり、これが国民の危機意識の推移を反映していると考えられるのでその推移を追ったグラフを図表4に掲げた。

緊急事態宣言が発せられた今年4~5月の調査結果は、暮らし向き意識が2月の37.5%からほぼ半減して20%台まで落ち込み、リーマンショック時の30%前後までの落ち込みを上回った。国民の危機意識はそれだけ大きかったといえよう。

ところが、緊急事態宣言が解除された6月以降はこの指標がまさにV字回復を見せている。夏ごろの第2波を受けて、8月には一時、若干値が低下したが、その後も回復し、11月には36.7%とほぼ落ち込み前の2月の水準にまで回復している。これを見る限り、少なくとも経済的な危機状況からはほぼ脱したと国民は感じているようである。

リーマンショック時の落ち込みは、今回の落ち込みよりも底のレベルは浅かったが、時期的には危機感が1年以上にわたって長く続いていた。これと比較すると今回のコロナ危機については、国民の不安は、「深かったが長続きはしなかった」といえよう。