繁盛店とガラガラ店の「格差」は、なぜ生じたのか
外食業界は新型コロナウイルスの感染拡大で大打撃を受けた。なかでもアルコールを提供する居酒屋やバーなどの酒場は、惨憺たるありさまだった。筆者は外食や料理業界を専門にしているが、なかでも酒場の現場を体験したいという思いがあり、今年2月から都内の繁華街にある新興の洋風チェーン居酒屋に不定期で勤務している。
そうした経験から、これからの酒場には以下の3つの変化が起きると感じている。
(2)大箱店 → 従業員の顔が見える小箱店
(3)チェーン的な店 → 「人の魅力」を売る店
居酒屋やバーは十把ひとからげに営業不振に陥っていたといわれるが、じつはそんなことはない。業態や立地などによっては、まったくとはいわないが、ほとんど影響を受けない店もあった。11月現在、客足が完全にもどっている店もあれば、いまだに5割に満たない店もある。そうした「格差」がなぜ生じたのかを記していきたい。なお、対象は筆者の住む東京が中心になるのでご了承いただきたい。
休業補償金で「かえって儲かってしまった」という店も
東京都では4月7日に緊急事態宣言が発令されたが、それ以前の3月上旬、とくに小中高校に対する休校が実施された3月2日を境にして街から人の姿が一気に消えた。筆者の勤める店でもそれまでは80席程度の客席が満席になることも少なくなかったにもかかわらず、3月は来店客が5~6組といった日が続いた。3月の売り上げは対前年比で3~4割。当然、赤字だ。
緊急事態宣言から5月のゴールデンウィークまでは東京都の休業要請に従い、店を閉めていた外食店が多かったが、なかには要請に従わずに営業を続けた店や、表向きは休業しながらも常連客を入れていた店も存在する。営業を続けた繁華街にある焼き鳥店の店主は、「うちの従業員は、外国人留学生を含む苦学生ばかり。彼らに給料を払うために休むわけにはいかなかった」と話す。
この頃には休業補償金や持続化給付金の手続きもはじまったが、支給額が一律であったため、売り上げ規模が大きな店ほど苦しくなった。高単価のレストランやバー、大箱の居酒屋など、月の売り上げが1000万円単位の店からは恨み節が聞こえた一方で、1人で営業している月商100万円前後のバーやスナックなどは売り上げ減をカバーできたばかりでなく、「大きな声じゃ言えないが、かえって儲かってしまった」という店も存在する。そのなかには、したたかに「闇営業」を続けていた店もある。
ゴールデンウィークが明けると営業を再開する店が徐々に増え、6月に入るとほとんどの店が営業を再開した。ただし、東京都の要請に従って時短営業するなど、「おっかなびっくり」の雰囲気である。ここから時短営業の要請が解除された9月中旬まで、酒場の明暗はくっきり分かれることになった。