「オフィシャル飲み」から「プライベート飲み」に

会社の飲み会や取引先との宴会は、今後も控えられる傾向が続きそうだ。コロナウイルスに感染することを恐れてということもあるだろうが、そもそもそういった「オフィシャル飲み」というものを敬遠するトレンドが今回の騒動によって拍車がかかったように思える。すでにひと昔前に見かけた20人、30人規模の飲み会もめっきり見なくなった。

筆者の勤める店でも以前は10人規模の団体客が多かったが、いまはほとんどが2人客、多くて3~4人である。こうなると大箱店はつらい。テーブルの配置からして4人席が基本であることに加え、もともと家賃の高い都心ではつねに満席になっていないと利益がでないような収益構造になっている場合が少なくないのである。

コロナ騒動以前からいわれてきたことだが、大箱の居酒屋やダイニングがいよいよ淘汰されるだろう。先に挙げた②の流れが加速することは間違いない。

こういった2~4人で訪れる客は、義理やつき合いではなく、仲のいい同僚や気の置けない友人同士の「プライベート飲み」である。プライベートであれば、自分たちの食べたいもの、飲みたいものを求め、行きたい店を選ぶ。

食べ放題の和牛焼肉。ワタミは2020年6月11日、和牛焼き肉食べ放題の新業態「上村牧場」を国内外で展開すると発表。居酒屋と並ぶ新たな主力業態として、5年後に国内200店、海外は10の国・地域で100店の展開を目指す(東京都大田区)
写真=時事通信フォト
食べ放題の和牛焼肉。ワタミは2020年6月11日、和牛焼き肉食べ放題の新業態「上村牧場」を国内外で展開すると発表。居酒屋と並ぶ新たな主力業態として、5年後に国内200店、海外は10の国・地域で100店の展開を目指す(東京都大田区)

「安くて、それなりにおいしい」チェーン居酒屋は衰退必至

イタリアン、中華、エスニックといった料理のジャンル、あるいはビールやワイン、日本酒が好きであれば、そうしたアルコールに特化した店を選ぶ。選択肢からはずされがちになるのが、なんでもそろっているのが売りであった総合居酒屋である。

わざわざ訪れるのであれば、少し気張ってということにもなる。山手線のすべての駅前にあるようなチェーン店よりは、個性の際立つ知る人ぞ知る店を選ぶ。この店でしか食べられない料理、味わえない酒、体験できないサービス。そういったものを求め、クチコミサイトやSNSを通じて店を探すことが、とくに若い世代の間では普通になっている。

「安くて、それなりにおいしい」チェーン居酒屋の需要が完全になくなるとは思わないが、とくに競争の激しい都心においては徐々に衰退していくのではないだろうか。ワタミが居酒屋から焼き肉への業態転換をすすめているのは、その予兆といえる。先に挙げた③の流れである。