新聞・雑誌・テレビの信頼度は高く、政治や宗教団体は低い
「世界価値観調査」(※)は世界の中で「日本人とはどんな国民か」を探る上で極めて重要な情報である。2020年3月に第7回目の結果が公表され、日本以外の世界各国についてもこのほど世界価値観調査の英文サイトに掲載された(調査時期:2017~2020年、日本は2019年)。
※世界数十カ国の大学・研究機関が参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較する調査。1981年から、また1990年からは、ほぼ5年ごとに実施。国ごとに全国の18歳以上の男女1000~2000サンプル程度の回収を基本とした個人単位の意識調査。
今回、本調査から取り上げるのは、「(国内のさまざまな)組織・制度に対する国民の信頼度」についてである。
図表1は、1995年から最新の2019年までの結果を時系列に掲げたものだ(2019年は前回調査の2010年で、これまでの2倍近くのインターバルとなっている点に留意いただきたい)。
2019年調査分で信頼度の高い組織・制度を順に掲げると、
2)警察(79%)
3)裁判所(78%)
4)新聞・雑誌(68%)
5)テレビ(65%)
6)大企業(47%)
7)行政(45%)
8)環境保護団体(44%)
9)国連(42%)
10)政府(40%)
11)労働組合(38%)
12)女性団体(35%)
13)国会(31%)
14)APEC(29%)
15)政党(26%)
16)宗教団体(8%)
※調査時の設問は、信頼している組織・制度を複数回答で選ぶというかたちではなく、信頼しているかどうかを各組織・制度について聞くというかたち。
ポイントは、各組織・制度に対する信頼度は年次によって変動が見られる中、新聞・雑誌とテレビは「高位安定」、宗教団体は「低位安定」が目立っているということだ。
新聞・雑誌やテレビなどマスコミに対する信頼度が高く、国会や政党などの政治分野、あるいは宗教団体に対する信頼度が低いという基本構造は、過去の調査と同じである。
短期政権が次々と入れ替わった時期の信頼度は低い
日本でマスコミに対する信頼度が高い理由についての私見は最後に述べる。ここでは、まず政治に関係する組織・制度に対する信頼度について考察してみよう。
国民の信頼度は、「行政」「政府」「国会」「政党」の順で数値が下がって(低くなって)おり、政治的な要素が強くなるほど信頼度が低くなることを示している。
また、これら政治的な色彩の強い組織・制度は、毎回の信頼度の変化パターンが相似形である点が目立っている。すなわち、1995年から2010年まで低迷を続け、その後2019年に一気に10%ポイント前後信頼度が回復している点が共通である。
劇場型政治といわれた小泉政権の後、2006年9月からの第1次安倍政権、および福田、麻生、鳩山、菅、野田と自民3内閣、民主3内閣の短期政権が次々と入れ替わり、政治への信頼度の低下傾向が止まらなかったが、2013年1月以降の第2次安倍政権は久方ぶりに長期的な安定政権を保持した。それが、政治的な組織・制度への信頼度も2010年時の調査に比べ2019年時に回復した背景にある。
行政、政府、国会、政党は、いずれも政治と関係する組織・制度なので、信頼度も連動して変化するのだと考えられる。