近年、「同性愛」に関する日本人の意識が大きく変化している。統計データ分析家の本川裕氏は「同性愛に対する日本人の許容度の最新調査(2019年)では男性の若年層(29歳以下)の数字が同中年層(30~49歳)より低く、また女性との差が若年層だけ大きく広がっている。若い男性だけ古い考え方に囚われているともとれる」と指摘する――。

自民党の特命委員会が2021年4月、同性愛者を含む性的少数者に関する「理解増進」を柱にしたLGBT法案を公表した。これに対して党内保守派にはなお慎重な意見がある一方で、当事者や活動家・有識者は、「理解増進」法案は理解が進むまでこれを免罪符にして差別を放置しようとする悪法だとして、むしろ「差別禁止」法案に変更すべきだと反対している。

また、こうした動きに先立つ3月17日には、同性婚を認めないのは「法の下の平等」を定めた憲法14条違反だとする判決がはじめて札幌地裁で下され論議を呼んだ。

今回は、同性愛を取り上げ、わが国でこれについての理解が高まっている点や世界の中でこれをめぐって価値観の二極化が生じている点について、データで確かめてみよう。

同性愛を認める方向への国民意識の大きな変化

まず、「同性愛」については、それに対して理解を示す方向で国民意識が大きく変化してきている点を示そう。

世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較する「世界価値観調査」が1981年から、また1990年からは5年ごとに行われている。ただし最新調査は前回から7~10年後(日本は9年後)となっている。

世界価値観調査は各国毎に全国の18歳以上の男女、最低1000サンプル程度の回収を基本とした個人単位の意識調査である。

この調査の日本に関する結果から、ここでは、同性愛に関する許容度の時系列変化をグラフにした(図表1参照)。同性愛のほか脱税、自殺、DVなどに対する倫理的許容度の設問は「全く間違っている」の1から「全く正しい」の10までの10段階評価で回答する形式となっている。

最新の調査結果を見ると「全く間違っている」(1点)は9.5%であり、「全く正しい」(10点)の29.4%の3分の1になっている。そして、6~9点の回答は合計で31.0%となっている。同性愛を「正しい」と考える日本人が多数派となっていることが理解できる。

しかし、こうした国民意識の現状は新しいものだ。世界価値観調査が行われた最も古い年次である1981年の結果を見ると「全く間違っている」が56.6%と過半数を占め、「全く正しい」は2.0%とごく少数だった。現在とはまったく正反対の状況だったことがよく理解できる。この40年で国民意識は一変したのである。

1~10点の10段階の回答の平均点を計算してみると1981年から、2000年、2010年を経て、2019年にかけて、2.48→3.53→5.14→6.71と変化している。2010年ごろにほぼ賛否が半々に達してから、さらに、この約10年に大きく同性愛容認の方に国民意識が大きく傾いたことが分かる。平均点による許容度判定については、これ以降も何度も登場するので頭に置いておいてほしい。