自衛隊への信頼度が上昇、警察・大企業の信頼度が2000年に落ちたワケ

逆に、自衛隊や警察といった実力組織、あるいは司法をつかさどる裁判所の信頼度がこうした政治的な組織・制度と連動せず、政治から独立した存在であることを示しているのは好ましいことともとらえられる。

傾向的な変化として目立っているのは、自衛隊への信頼度の上昇であろう。1995年の阪神・淡路大震災以降、内外の防災面で果たしている自衛隊の役割が国民から高く評価されているためと考えられる。

警察への信頼度が2000年に大きく落ち込んでいるのが目立っているが、これは、1999年9月の神奈川県警の覚せい剤使用モミ消し事件以後、新潟の女性監禁事件に端を発した一連の不祥事(県警本部長が深夜まで飲酒、マージャンをしながら事件の指揮)、桶川女子大生ストーカー殺人事件、栃木リンチ殺人・死体遺棄事件における捜査の失態など、2000年にかけて警察の不祥事が次々明らかになったためだと考えられる。

警察と同様に大企業についても、信頼度が2000年に大きく落ち込んでいるのが目立っているが、これは、2000年夏、食中毒事件の雪印(6~7月)、経営が破綻したそごう(6月)、リコール隠しの三菱自動車(7月)と日本を代表する名門企業が相次いで不祥事を起こした影響と思われる。

警察、大企業の信頼度は、その後、大きく回復していることから、2000年の落ち込みは不祥事による一時的なものだったことが分かる。

先進国の中で日本はマスコミへの信頼度の高さは特異

各組織・制度への信頼度についてのこうした傾向は日本だけの特徴なのだろうか。

他国もマスコミに対する信頼度はやはり高く、政治に対する信頼度はこんなに低いのであろうか? こうした点を理解するには、諸外国、特に先進国の状況と比較する必要がある。

図表2では、宗教団体、慈善団体、軍隊(日本は自衛隊)、新聞・雑誌、労働組合、警察、議会(日本は国会)、行政、テレビ、政府、政党、大企業、環境保護団体、裁判所、国連、EUという16組織・制度について、どの組織・制度に対する信頼度が高いかを信頼度区分別の表形式で示した。なお、国によっては対象項目が少ない場合がある。

結果を見やすくするため、宗教団体は黄色の背景、新聞・雑誌とテレビというマスコミについては赤字フォント、政府は青字フォントであらわした。

世界各国における組織・制度への信頼度(世界価値観調査2017年~20年)

取り上げた対象国は、先進国の代表である日本・欧米の計7カ国であるが、先進国以外の参考事例として、この2月1日に国軍によるクーデターが起こり、政権トップのアウン・サン・スーチー国家顧問兼外相らが拘束されたミャンマーの結果を付け加えた。

先進国の場合、総じて軍隊、警察、裁判所の信頼度が高く、議会(国会)、政府、政党の信頼度は低いという一般傾向が認められる。

政府への信頼度は、英国、イタリアが20%台と低いが、日本、米国、ドイツ、フランスも30%台とそれほど高いわけではない。欧米の中ではスウェーデンが50%台と比較的高い。

政党、および政党色が濃い議会はどの国でもほぼ最低レベルである点が共通である。

党派性が強く、政治活動とむすびついている組織・制度は、軍隊や裁判所など政治や党派性からの独立を本旨とする組織・制度と比較して国民からの信頼度が低い傾向があるのである。

行政への信頼度は両者の中間が多い。民主主義国では行政機関を選挙で選ばれた政治家が率いるのが通例だからである。