部下への攻撃は自信のなさの表れ

高圧的な態度をとったり、否定的な言い方で責めたり、悪口や皮肉を浴びせたり……そんな上司からの攻撃に悩んでいる人は少なくありません。こうした行動のすべてがパワーハラスメントに該当するわけではありませんから、相談窓口に訴えることもできず、つらい思いをしながら働いている人もいるでしょう。こうした嫌な上司にはどう対処したらよいのでしょうか。

そもそも私たちには「上下関係をつくりたがる本能」があります。これは、人間という動物が集団生活を営み、協力しあうことで進化してきたことに起因します。より高度な協力関係を築くためには共同体における「立場の上下」を明確にする必要があったのです。そのため、現代を生きる私たちにも無意識のうちに「この人は自分より上か下か」を判断したくなる心理が働きます。

会社でリーダーとして働いていても、個人にとっては「全体集団がうまく機能するか」より「この集団の中で自分はどのくらいの立ち位置か」のほうがはるかに重要です。とりわけ攻撃的な言動をする上司は「自分のほうが有能で格上だ」と誇示したい気持ちを強く持っています。それは「攻撃しないと自分の価値が傷つく」と考える自信のなさや弱さの表れでもあるのです。

このような上司から攻撃的な言葉をぶつけられたとき、多くの人は相手との衝突を避け、ぐっと我慢して聞き流しているのではないでしょうか。しかし、「やられっぱなし」では損をしてしまいます。相手は「こいつは自分より下だ」と判断し、それ以降も同様の言動を繰り返すようになるからです。

さらには、それを見ている第三者にも「やられている側は能力的に劣っている」と認定されてしまいます。

心理学の有名な実験を紹介しましょう。まずは被験者たちに「電気ショックで苦しむ人」の映像を見せます。その後、被験者を3つのグループに分け、Aには「この人は実際には電気ショックを受けておらず、演技をしている」、Bには説明なし(不当に電気ショックを受けていると理解させる)、Cには「この人は電気ショックを受ける代わりに30ドルの報酬をもらっている」と、それぞれ異なる説明をします。そのうえで各グループに「この人はどれだけ魅力的か」を尋ねたところ、Bからの評価が最も低く、平均よりも「魅力的でない」とされたのです。

「演技をしている人」と「報酬を得ている人」には、それぞれ苦しむ理由があります。しかし、不当に電気ショックを受けたと理解したBのグループは、「この人は能力的に劣っているからこんな目に遭っているのだ」と理由を後付けしたのです。

他人の悪口や攻撃に対して何の対処もせず放置していると、それを見た人は「あいつは劣ったやつなんだ」と理解してしまいます。さらに自分自身も「自分は能力がないからこれだけの不幸を受けてしまったんだ」と思い込んでしまいます(これを心理学用語で「認知的不調和」といいます)。そういった状況を避けるために、相手がたとえ上司であっても、ある程度の抵抗は必要です。

相手の怒りを鎮めて反撃に持ち込む方法

攻撃的な発言を繰り返す上司への、最大の防御法が「反撃」です。反撃といっても相手を完膚かんぷなきまでに叩きのめす必要はありません。ポイントは、相手の怒りを鎮めつつ、ちょっとだけ言い返すこと。それだけで「私はあなたより絶対的に下の立場ではない。時には反撃することもある」とのメッセージを相手に伝えることができます。

具体的には、心理学者のネルソン・ジョーンズが提唱する「5つの戦術」が有効です。

(構成=堀尾大悟 イラストレーション=佐藤ワカナ)