「バナナ」は優秀なエネルギー源
「営業で夕方からあと3軒客先を回らなければならない」「今日中に重要書類を仕上げるため、残業しなくてはならない」「夕方からラストスパートをかけて、上司に明日提出するマーケティングリサーチの報告書を完成させたい」――こんな追い込みをかけたい夕方には「バナナ」で軽く腹ごしらえしましょう。
夕方からもうひと踏ん張りするには、エネルギー源となる糖質が必要です。バナナにはブドウ糖や果糖、デンプンなど、さまざまな種類の糖質が含まれています。それぞれの糖質は消化吸収される速度が異なるため、長時間にわたってエネルギーを供給できるという特徴があります。ですから、追い込みをかけたい夕方には、ちょうどいいエネルギーチャージになります。
ただ、とにかく糖質を取ればいいというわけではありません。からだの細胞内で、「TCAサイクル(クエン酸回路)」というシステムによって、糖質を活動するためのエネルギーに変換する必要があります。その際には、酸素とビタミンB群が必須。いくら糖質を取っても、ビタミンB群が不足しているとエネルギーを生み出せないのです。その点、バナナにはビタミンB群も多く含まれているので、エネルギー源として申し分ありません。
甘い香りが緊張やストレスを緩和する
追い込みをかけるときは、ゆっくり食べている余裕なんてないかもしれません。しかし、そんなときだからこそ、よく噛んで唾液をしっかり出して食べることが大切です。唾液中に含まれる消化酵素・アミラーゼが噛むことによってバナナと混ざり、胃腸への負担を軽くしてくれるからです。また、噛む回数が増えると、満腹感も増します。同じバナナでもジュースだと、こうした効果は得られませんから、丸ごと食べるのがおすすめです。
バナナの甘い香りにはリラックス作用があり、緊張やストレスを和らげてくれます。皮の表面に現れる茶色のポツポツは「シュガースポット」といい、熟したサイン。糖分が増えて甘みが強くなるので、これが現れたら食べ頃です。
バナナは持ち運びしやすく、どこでも食べられるから、忙しいビジネスパーソンにもぴったり。「今日は夕方からがんばらないと!」というときはバッグに入れておきましょう。専用のケースも売っています。ただし、カロリーが高いので食べすぎは禁物。追い込みをかけるために食べるなら1本(可食部100g程度)で十分でしょう。
「筋トレ」前にもバナナは効果的
最近、トレーニングジムに通うビジネスパーソンが増えていますが、バナナは「筋トレ」前後にも効果的な食品です。
仕事帰りにジムに通う場合は、“追い込みをかける夕方”と同じように始める前にバナナを食べておきましょう。炭水化物が含まれているため、筋トレをこなすエネルギーが持続し、筋力アップにつながります。また、筋肉のエネルギー源となるBCAA(バリン・ロイシン・イソロイシンの3種類のアミノ酸)が豊富で、運動後の筋肉の疲労回復にも役立ちます。
やってはいけないのは、空腹のままジムに行って運動すること。エネルギーが不足した状態で運動すると、脂肪だけでなく筋肉も分解されてエネルギーとして利用されるため、逆に筋肉が落ちてしまいます。
もしも、筋トレ後に食事が摂りにくい場合はバナナを利用して繋ぎましょう。運動で消費したエネルギー源も補充できます。
このようにバナナは、エネルギー源である糖質を多く含むうえ、からだづくりに必要なタンパク質、ビタミン、ミネラル、抗酸化成分なども摂取できるため、アスリートに最適な食品です。
取ってはいけない!「エンプティ・カロリー」食品
私が栄養指導でいつも言っていることですが、炭水化物や糖質を摂取したいときに「エンプティ・カロリー」の食品・飲料は取ってはいけません。
エンプティ・カロリーとは、簡単に言うと「栄養素がエンプティ(空)で、カロリーが高い」食品・飲料のこと。脂質や糖類などがほとんどを占め、タンパク質やビタミン、ミネラルなど、からだにとって必要な栄養素が非常に少ないものを指します。栄養素がまったくないわけではありませんが、大切な栄養素が欠けているため、こう呼ばれます。
具体的には、ハンバーガーやカップ麺、フライドポテト、精白糖をたくさん使ったチョコレート・スナック菓子、アイスキャンディ、炭酸ジュース、砂糖やミルクがたっぷり入ったコーヒーなど。エンプティ・カロリーの食品・飲料を取りすぎると、肥満や生活習慣病などさまざまな病気のリスクが高まります。
こうしたエンプティ・カロリー食品を食べた日は、栄養を補うために、タンパク質やビタミン、ミネラルをたくさん含んだ食品を取るようにしましょう。
ロッカールームでバナナを食べてエネルギー補給
私は管理栄養士としてJリーグの浦和レッズをサポートしていますが、ありがたいことに、いつも無償でたくさんのバナナを届けてくださるファンの方がいらっしゃいます。
試合のある日は、そのバナナを半分に切って一つひとつラップでくるみ、ロッカールームに準備しておきます。半分に切ってあるのは、空腹具合やコンディションなどに合わせて量を調節しやすいように。選手たちは、試合が始まる2時間前くらいにロッカールームに入りますが、試合の前だけでなくハーフタイム中もバナナを食べています。
サッカーだけでなく、フィギュアスケートや競泳、陸上などでもエネルギー補給のために試合の前後や合間によくバナナを食べています。カーリングの選手が、「もぐもぐタイム」にバナナをほおばる姿をテレビで見た人もいるでしょう。
試合が終わって選手が帰った後も、スタッフが後片付けや次の試合の準備などで残っているのですが、その間もバナナはどんどん減っていきます。まさに、追い込みをかけるためにスタッフがエネルギーを補給しているのでしょう。
残ったバナナは、冷凍にしてスムージーにしたりバナナケーキや焼きバナナなどを作ったりして余すことなく消費しています。おすすめは、朝食用の「シリアルバナナヨーグルト」です。シリアルは栄養価の高い玄米フレークかオールブランを。器にフレークを入れて、ヨーグルトと食べやすい大きさに切ったバナナをのせれば完成です。腹持ちがいいし、美容やダイエットにも役立ちますよ。


