――優秀なプレーヤーが優秀なマネジャーになるのは難しいといいます。なぜ難しいのでしょうか。優秀なマネジャーになるにはどうしたらよいでしょうか。(後編)
【堀】優秀なプレーヤーがなぜ優秀なマネジャーになれないか。今回はその2つ目の理由についてお話ししましょう。
人間も組織も社会も生き物であるがため、変化の競争を続けています。一流大学を卒業し、難関の採用試験をパスして一流企業の一員になったとしても、変化しなければ生き抜くことができない。つまり、過去はあまり大事なことではない。むしろ、ここから先どのように変化するのかが最も大事なことなのです。
変化の好例として、私がリスペクトしている会社に、帝人と東レがあります。
帝人は、1918年に帝国人造絹絲として創立されました。ストッキングの材料であったレーヨンから合成繊維メーカーへと変わり、その後は医薬事業にも進出し、2021年には利益の内訳としてヘルスケアが39%、マテリアル事業が28%と変貌を遂げています。
東レは、1926年に東洋レーヨンとして創業しました。ナイロン、レーヨンといった繊維産業からプラスチック事業や水処理膜事業へ、今では航空機の構造材として使われる炭素繊維なども開発製造しています。2021年には、繊維38%、機能化成品38%、炭素繊維9.8%という売り上げ構成に変化しています。
両社とも時代の変化とともに脱皮を繰り返し、いまでは1兆円企業に成長しています。会社がこのような変化を遂げるなか、社員もこれまでとは異なる能力を身につけ、進化しなくてはなりません。
前回、職階に応じて脱皮すべきことを伝えましたが、時代の変化に応じて脱皮すべきことも伝えたい。たとえ過去に優秀なプレーヤーとして評価されたとしても、社会が求める新しいスキルや能力を身につけることなくして、優秀なマネジャーにはなれません。
私からのメッセージは、生まれついてすべての能力が備わっている人など存在しないということです。優秀なマネジャーとなった人は、学んで練習し、習得した人に他なりません。

