本連載では、“伝説のトップコンサルタント”堀紘一氏に、メルマガ編集チームでまとめたリーダーたちの悩みをぶつけ、堀氏にズバッと斬っていただきます。(2022年3月14日レター)

――不祥事、業績不振、望まぬM&A……当事者ではなくても、となりの部署や同じ社内に問題が起きた場合、マネジャーとしてできることはあるか。

【堀】ある部署が問題を起こし、混乱した社内では、「会社の評判は落ちるし、お客様からは非難されるし、あの部門はなんてことをしてくれたんだ」という不満や非難の反応が起きることでしょう。

しかし、あなたは冷静になってほしい。本当にそれは一部門が原因で起きる問題なのだろうか、自分の部門と比べ何かが劣っていたのか。よく考えてみると、実はあまり自部門と変わらないことが多いことに気づくはず。自分の部門も問題を起こす可能性があるということです。他人事ではない。対岸の火事でもない。それならば、まずは、自分の部門の屋根に水をかけておくという防火策をとることがやるべきことの一つです。問題の部門だけではなくて、自分の部門でも不祥事が起きて火を噴いたということになっては、会社としてさらに厳しい状況に陥ってしまいます。

二つ目にやるべきことは、自分の部門から人を出してあげることです。しかも、経験が浅い人や若い人ではなく、バリバリ活躍しているエース級の人をです。あなたが課長なら、筆頭課長補佐とその次の課長補佐というイメージです。「そちらの部門の専門性はないから役に立たないというなら遠慮なく断ってほしい」と言えば、先方も「いやいや、もう人手が足りなくて困っているので、ありがたく引き取らせていただくよ」ということになるでしょう。しかも、エース級の人材が来てくれるなら、どれほど助かることか。

あなたの部門にとっては痛手ではないか、と思うかもしれません。しかし、問題を起こした部門は、もっと困っている。もっと痛い思いをしている。だから、助けに行かなくてはなりません。助けに行くならば、失敗も成功も体験している経験豊富で有能な人材に限ります。

周囲の人はよく見ていますから、「あの人は自分の股肱の部下を二人も出した。大した人物だ。次の部長はあの人で間違いないだろう」ということになります。次の部長になるための運動などしなくても、周りが自然とそう思うようになるのです。

問題が起きているときどういう行動を取るかによって、人としての器がどれほどかが普段よりも見えやすくなります。的確な行動をとれば、多くの人が称賛してくれるに違いありません。何もしないで非難ばかりする、むしろ邪魔をするような行動をとっているとなれば、周囲をがっかりさせることになるでしょう。

(構成=今井道子)