――優秀なプレーヤーが優秀なマネジャーになるのは難しいといいます。なぜ難しいのでしょうか。優秀なマネジャーになるにはどうしたらよいでしょうか。(前編)
【堀】優秀なプレーヤーがなぜ優秀なマネジャーになれないか。その理由は大きく分けて2つあります。今回は、1つ目の理由についてお話ししましょう。
私は、以前に『脱皮できない蛇は死ぬ――クリエイティブカンパニーへの道程』という著書の中で、蛇が脱皮を繰り返し成長するように、会社は常に脱皮しなければ生き残れないこと、そしてビジネスパーソンも同様であることを書きました。社会は常に変化し、会社も常に変化を遂げ、人もそれにあわせて脱皮を繰り返さなければならないということです。
さて、プレーヤーとして優秀な成果を挙げたのでマネジャーに昇格させたら伸びなくなってしまった、ということはよく起きることです。プレーヤーとしてはさほどでもなかったのに、マネジャーになったら頭角を現したという人も、たしかにいます。それは、求められる資質が異なるからです。
少し話を具体化して、プレーヤー、マネジャー、リーダーという3つの職階で考えてみると、この3つの職階は求められている資質が異なります。プレーヤーには、マネジャーの指示に従い、職務を遂行する能力が必要です。マネジャーには、現場でプレーヤー達の指揮をとり、指導、管理、評価し、結果を出す能力が求められます。一方、リーダーには、深く思考し、いかなる時も誤りのない方向へ組織全体を導く能力が求められます。
全く異なる能力が必要とされている以上、プレーヤーがマネジャーになるためには、まずはマネジャーへと「脱皮する意思」がなくてはならない。そして、ひとたび脱皮すると決めたならば、当然プレーヤーとは異なる視点でマネジメントについて必死で深く学ばなければなりません。
また、マネジャーからリーダーになる場合には、脱皮する意思だけでなく「覚悟」も必要です。なぜならば、リーダーとして組織を誤りのない方向に導くには、強い思いと人並外れた努力が求められるからです。マネジャーとは異なるリーダーシップを、自ら学んで掴み取らなければなりません。
日本の会社では、30代半ばまではプレーヤーで、その後40代はマネジャーを勤めさせ、その中からリーダーになる人材が出るということが多い。しかし、本来は、年代によって職務を決めるのではなく、資質によって職務を変えるべきなのです。各々の人材が資質を生かした能力を発揮し、結果として会社も成長していくように、3つの異なる能力集団を育てつつ、組織としても脱皮していくのが定石です。
私からのメッセージは、プレーヤーから優れたマネジャーになりたいなら、マネジャーに求められている資質を知り、能力をとことん磨き、脱皮を繰り返す努力をしなさい、ということに尽きます。

