非合理な行為がまかり通る「魔界」

読者のみなさんは、小学校のPTA※1活動に関わったことはあるだろうか。私は50歳半ばを過ぎてから長男の小学校のPTA会長を3年やり、現在数年ぶりに再び中等教育学校のPTA会長をつとめている。多くの人が「PTA活動なんてやりたくない」と思っているのも知っている。私もそうだったからだ。

※1:Parent(保護者)-Teacher(先生)-Association(組織)の頭文字をとったもの。保護者と教職員が協力して子供の健全な成長を支援する社会教育関係団体。

PTAは教育委員会や学校の下部組織ではなく、任意団体である。本来、参加するか否かは自由なはずだ。だが、現実には「やめにくい」「断りにくい」空気が根強く残っている。「一人一役」といった耳当たりのいい言葉の背後には、「やらない人は非常識」「みんなやっているのに」という、見えない同調圧力が渦巻く。こうした空気の中では、合理性や個別の事情が通用しない。

とりわけ、PTAに深くコミットし、後述する「ポイント制」によって貢献度を可視化しようとする一部の専業主婦の姿勢が、オフィスで働く母親たちには異様に映る。何年も前から引き継がれてきた形式や手順、慣習を、何の疑問もなく踏襲し続けることで“やりがい”や“達成感”を得ている人たちがいる。一方、オフィスで働く母親たちには、それらが現代の常識とはあまりにもかけ離れた非効率で無意味な作業に感じられる。

例えば私をイライラさせてきたことの筆頭が、いわゆる「学校便」というシステムだった。教員室の前の廊下にあるPTAの棚やボックスに、ありとあらゆる種類の「学校便」と名付けられたチャック付きだったり、封筒だったりする書類入れがあり、そこに「○○小学校PTA会長↔△△小学校PTA会長」とか、「○○区PTA連合協議会宛」などと紙が貼ってあり、その中に各種会合のお知らせと、「出欠確認書」というものが入っている。このファイル便を事務所にある黒いバッグに入れておくと、宛先の学校や事務所に届けてくれるという仕組みだ。

会合の出欠確認はメールやアプリで済む時代に、紙を配布し手書きさせ、学校に足を運んで回収させるのが当たり前。行事の準備で使う資料も、共有ドライブで事足りるにもかかわらず、わざわざ印刷・配布する。各人で持ってくればいいはずのお茶を用意し、ネームプレートを準備する“おもてなし”も、誰のため、何のためなのか曖昧なまま、ただ「これまでやってきたから」という理由で続けられている。こうした行為は、効率を求めるビジネスパーソンにとっては奇異に映る。

PTA活動のスリム化を阻む大きな理由が、「ポイント制」だ。PTA活動への貢献度の「見える化」のためのやり方として、ポイント制は、全国の各学校単位のPTA(単位PTA)で採用されている。それは、多種多様な活動の大変さや重要度に応じてポイントを割り振り、6年間の活動の評価の標準として一定ポイントを目安にして、保護者たちの参加のインセンティブにするというものだ。

保護者の多くは、このポイントをどうやって効率的にそろえるか知恵を絞る。その結果、今の時代に合わない活動が残り続ける。

特に象徴的なのが、私が「古紙回収の活動はカットしよう」と提案したときに役員から挙がった声だ。「みんな新聞購読しなくなっちゃってるから、やめるべき活動なのはわかります。でも実際にやめるなんて無理ですよ。月に1回、ステーションに古紙を置くだけでポイントを稼げるから、それをアテにしているお母さんもいるんです」

私を説得しないと古紙回収が廃止になってしまうという焦りを感じたのか、別の役員さんがこう言った。「古紙が減っちゃってステーションが寂しいっていうのは、その通りなんですよ。だから、ママたちの間では新たに新聞とろうかって思い詰めちゃってる人もいるみたいなんです……」

検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます

【関連記事】
話すことに卑屈な男が報道番組キャスターになるまでの極意『不器用だった僕がたどり着いた「伝え方」の本質』
名古屋走り、茨城ダッシュ、伊予の早曲がり…知らないと超危険な「運転文化・ローカルルール」
ムダを感じるもの第1位は「会議」…1600人調査で判明「ビジネスパーソンが捨てたもの、捨てたいもの」
なぜメール冒頭に「お世話になっております」と書くのか…親切で丁寧な言葉づかいのウラにあるもの
そりゃ育休を取らないわけだ…制度は世界一なのに、「日本人男性の7割」が育休を取得しない根本原因