「地方の女性流出」説の真偽
地方においては深刻な人口減少問題があります。
総務省の発表によれば、2025年の都道府県別の転入超過数で転入超過(プラス)なのは東京、神奈川、埼玉など7都府県のみで、残りの40エリアはすべて転出超過(マイナス)となっています。
特に、人口移動の大部分を占めるのは20代で、これは、進学や就職きっかけで都会に若者が移り住むことによります(実質18歳で転出したとしても在学中の住民票は地元のままの場合もあるので)。
地方の20代の転出超過数だけでみると、男<女が多く、これが「地方の女性流出」といわれる根拠となっています。そのため「地方からの女性の流出を防げ」や「女性の流出に危機感なくして地元人口の未来なし」などと言われたりしますが、果たしてそれは問題の本質をとらえているでしょうか。
そもそも、この転出超過数だけを見て判断するのは正しくありません。
確かに、転出超過数が男<女であるのはその通りですが、そういわれると各地方から流出する若者は男性より女性のほうが多いとイメージしてしまうでしょう。かつて、地方から出てくるのは男性でした。それが令和では逆転したのかと思う人もいるかもしれません。
男性は出ていくが、戻ってもくる
1975年にヒットした太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」という曲があります。「生まれ故郷に恋人を残して都会に出ていく僕」を歌ったもので、若い男性が就職で上京する当時の経済成長期の世相を反映したものです。令和の今は、出ていくのは女性で「逆・木綿のハンカチーフ」現象などと論じた新聞もあります。
しかし、実は逆転など起きていません。昭和も平成も令和も、地方から転出する20代の若者は男性のほうが多い。実数においても人口比転出率にしても男>女です。
では、なぜ地方の転出超過が男<女になるかというと、男性は転出も多いが、その分転入も多いからです。図表1は、各エリア別に男女それぞれの転出率と転入率を比較したものです。すべてのエリアで、男性のほうが女性より転出も転入も多くなっています。
つまり、これは、地方における問題は、女性の流出ではなく、「転出した女性が男性に比べて戻ってこない問題」とも言えるわけです。単に、転出超過だけを見たのではその本質を見逃してしまいます。


