必要なのは「北風」ではなく「太陽」
出ていく若者側の視点に立てば、「絶対に出ていかせない。出ていくのは地元に対する裏切り行為だ」などという意地悪な自治体より、「がんばっていってらっしゃい。応援します」という自治体のほうが誇りに思えるでしょう。「うちの地元はいい所だよ」と広報の役割も果たしてくれるでしょう。
大都会の仕事でキャリアとネットワークを作った若者が、今度はそのスキルで地元に貢献しようと戻ってくる可能性だってあります。あわせて、都会で夢破れ、疲れた若者をあたたかく「おかえりなさい」と迎える制度設計があればなおよいでしょう。一度出た若者を裏切り者扱いしていたのではそんな未来は作れません。
残念ながら、地方の人口減少を止める魔法などありません。若者の転出だけではなく自然減もあるからです。東京含め日本全体が人口減少するのは必然です。だからこそ、定住だけに価値をおかず、転出転入という移動を前提にした社会の中で、「循環価値」を生み出す方向が求められます。
若者が町を出ることは裏切りでも悪でもない。別れではなく旅立ちです。戻るかどうかは本人の自由ですが、快く旅立ちを応援してくれたという思いや帰れる場所があるという安心は若者の人生のどこかで必ず意味を持つでしょう。
もちろん、こうした取り組みは自治体間や国と連携しながら進めていく必要がありますが、自治体間の人口の奪い合い視点から脱却し、どこの地方も若者の挑戦を応援するという循環構造を作り出すことが、結果として関係人口を増やすことになるはずです。
「北風と太陽」の寓話にもあるように、地方がやるべきは北風政策ではなく、若者の希望を照らす太陽政策のほうでしょう。

