脳科学をやっていると、自分の個性を見極めるのは難しいということを常に感じる。欠点を修正する必要があるのに自分ではそれと気づかなかったり、逆に他人から見れば魅力的な点が本人にはわからなかったりする。
日本人は「心の貧困」に陥ってしまっているという見方がある。最近しばしば耳にするこのような論調にも、自分で自分のことを知ることの難しさを感じる。本当に私たちの心は貧しいのだろうか? 日本人は、案外、自分たちのことがわかっていないのではないか。
確かに、最近の日本はネガティヴなニュースが目立つ。物騒な事件が多いような印象がある。生活や将来への不安、社会的孤立が背景にあるともされる。そのような点からは、日本は「心の貧困」の中にあるようにも思える。
一方で、外国から見れば日本が魅力的な国であることも確かである。日本は心が貧しくて、近頃は悪いことばかりだと他の国の人に言っても、信じてもらえそうもない。日本人の行きすぎた「謙遜」だと思われるかもしれない。
次世代の文明をつくる人工知知能の基盤モデルの開発では苦戦していても、応用の分野になると、俄然日本の存在感が増してくる。漫画、アニメの世界的な人気はいまさら言うまでもない。
最近では、人工知能の能力の「ベンチマーク」として、写真などをもとに「スタジオジブリ風」のイラストを生成することが流行った。宮崎駿さんは、世界のクリエーターの間では神のように尊敬されている。
インバウンドの観光客の間では、ラーメンやたこ焼きなどの日本の日常食が人気である。大リーグ開幕戦で東京を訪れた関係者が、おにぎりやサンドイッチなどの食に心を動かされたことは広く報じられた。日本人にとって当たり前のことが、海外から見ると魅力となるようだ。
日本の現状と、悲観論の間にはギャップがある。私たち日本人は、自分たちの良さがわかっていないのだろうか? 実際には、日本人は普段言っているほど自分たちの現状をネガティヴにはとらえていないようでもある。
若い世代には、不満はあるものの、特に外国に行きたいと思わないという声も多い。コンビニなどの生活インフラが整い、世界一暮らしやすい国であること、漫画やアニメに加えて、スーパーマリオやポケモンに代表されるゲーム文化も豊かであることなど、十分に満足していることが伝わってくる。
もっとも、だからこそ日本の停滞があるのかもしれない。生活に基本的に満足しながらも、30年も続く低成長、デフレの中、この安定がいつまで維持できるのかと多くの人が不安に思っており、日本の未来に対する悲観論につながっている。努力を生み出すのは、現状に対する「差分」の認識であり、「次の一歩」であり、ぬるま湯に満足しているだけでは成長できないのだ。
ここから先は有料会員限定です。
登録すると今すぐ全文と関連記事が読めます。
- 広告最小化で快適な閲覧
- 雑誌『プレジデント』が最新号から読み放題
- ビジネスに役立つ学びの動画が見放題
- 会員限定オンラインイベント
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます


