現代人が気分よく働くためには、体のバランスを保つことがとても大切である。その際にポイントになるのは、痛みなどの不快情報に対する向き合い方だ。痛みがあると、どうしても体を動かす際に制約が生じてしまう。活動するときにも、痛みを避けようとして、範囲が狭くなる。
とりわけ、慢性痛があると、つい守りに入って、積極的な行動ができにくくなる。その結果、人生が負のスパイラルに入ってしまうこともある。
脳が痛みを感じるメカニズムは、まだ解明されていない点も多い。体性感覚野や、前部帯状皮質、扁桃体などの部位が痛みの知覚に関与していることはわかっているが、なぜ、どのようなときに痛みを感じるのかは完全にはわかっていないのだ。
慢性痛を感じている人の脳では、側坐核の活動が低下する一方、扁桃体の過活動がみられる。側坐核は脳にとってうれしいこと(報酬)に関する情報処理をつかさどる部分であり、扁桃体は感情の中枢である。
このような脳の変化から推定されることは、痛みを感じるあまり、脳の報酬になるような活動が低下して、その分、扁桃体のネガティヴな活動が増加しているということである。痛みがあるために、つい行動が消極的になってしまうといった変化が、脳活動からも裏付けられている。
痛みを感じているときは、活動を避けるのではなく、むしろうまく行動して側坐核を含む脳の報酬系を活性化することが大切である。そうでないと、脳や体のバランスが回復できないし、人生に対しても消極的になってしまう。
私自身は、少し体のバランスが崩れそうになると「歩いて治す」「走って治す」ということを長年の習慣としている。実際、じっとしているよりも、ある程度アクティヴに行動したほうが、体の調子がよくなるようだ。
運動することで全身の血流が増加し、脳の神経活動も活性化する。報酬系も活動して、その結果、脳の中で扁桃体に対して側坐核の活動が高まる。
「ちょっと調子が悪いかな、と思うと、走って治すんだよね」と言うと、驚かれることも多い。一方で、私のようなやり方を続けていらっしゃる方もいる。「運動が一番の良薬」というのが私の実感である。
私は現在62歳だが長年にわたるランナーであり、毎年フルマラソン大会に参加している。走っていて足のどこかが痛くなった場合には、まったく動くのをやめてしまうのではなくて、ある程度様子を見ながら、走ったり、歩いたりといったようにして徐々に治すことが多い。
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