人工知能で高まる「認知症リスク」の回避法

脳科学的には、地頭の良さとは、「集中力」のことである。与えられた課題にどれだけ脳のリソースを投入できるかで、パフォーマンスが決まる。

さまざまな科目の成績の間には、相関があることが知られており、この地頭の良さは「g因子」と名付けられている。一般知能因子とも呼ばれるこの因子は、前頭葉を中心とする集中力の回路によって支えられている。

g因子に基づき、頭の良さの目安になるのがいわゆる知能指数(IQ)である。知能指数は、およそ50%が遺伝的要因に影響を受けるとされていて、後の50%は、自分の努力次第であるとわかっている。頑張れば、地頭を鍛えて知能を高めることは可能なのだ。

地頭を鍛えるにはどうすればいいのだろうか? 集中力は、「負荷トレーニング」で鍛えるのがよい。ノイズがあったり、課題遂行の邪魔が入るような環境で、あえてそれを引き算して目の前の課題に集中するのである。

現代人は、常に情報の洪水の中に生きていて、仕事や勉強をしていても、メールやSNS、ニュースなどの「邪魔」が入る。そのようなノイズにさらされても、なおも集中を続けることで、前頭葉の働きが高まり、結果として地頭が良くなるのだ。

知能を伸ばすもう一つの鍵は、「認知的負荷」の高い課題に取り組むことである。似たような問題でも、より複雑で、粘り強く取り組む必要があるときに、前頭葉の集中力の回路が活性化し、地頭の基礎であるg因子が高まることがわかっている。

難しい問題に取り組んでいるときに、脳が集中して活動している感じがあるのは誰でも経験していることだろう。そのような主観的体験が、脳活動を磁気共鳴機能画像法(fMRI)で計測した客観的なデータで裏付けられている。認知的負荷の高い課題に取り組むことで、前頭葉の集中力の回路が活性化するのである。似たような課題でも、簡単にできる認知的負荷の低いケースでは、そのような活性化は見られない。

このような知見を前提に考えると、人工知能が発達して、何でもAIで解決できるように見える時代の、地頭を鍛えたり維持したりするという視点からのリスクと可能性が見えてくる。

まず、何でもAI頼みになってしまうと、脳の認知的負荷が低くなり、集中力に用いられる前頭葉の回路の活性が落ちる。結果として、関連する神経細胞の結びつきも弱まり、認知能力が低下するリスクがある。

AIがあるからそれでもいいという考え方もあるかもしれないが、認知能力が落ちることは、脳の「健康」上好ましくないだけでなく、認知症などのリスクも高まることを意味する。やはり、筋肉と同じで、脳は認知的負荷をかけて使えば使うほど強く、若々しく保てるのだ。

(撮影=相澤 正 写真=iStock)

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