人間の脳の働きを考えると、自分にはさまざまなことができるという「根拠のない自信」は大切である。

自分はこのような資格を取得しているとか、英語の検定試験で何点であるとか、あるいは学歴があるなどの理由で自信を持つ人もいるかもしれないが、それよりも、何者でもない自分が、いろいろなことにチャレンジできるという根拠のない自信のほうが尊い。

子どもには、根拠のない自信がある。それは、自分が変わることができるとわかっているからである。実際、子どもはさまざまなことを学び、習得し、次第に違う自分になっていく。根拠のない自信は、それを裏付ける努力があって初めて活かすことができる。自分はチャレンジできる、変わることができるという確信と、それを裏づける努力が、人生を豊かなものにする。

最近、健康に気をつかう人が増えている。健康習慣を重視することは大いに結構なことだが、その中で、ある意味では「長生き」よりも大切なことを見落としてしまっては、元も子もない。どれくらい長く生きるかも大切だが、その人生の質も問われているのだ。

AI(人工知能)やバイオ技術で健康になろう、寿命を延ばそうとする流れがあるが、長く生きることに躍起になるより、「どう生きるか」という本質を見失わないことが大切なのである。

「自分は何者にもなれない」という焦りは、誰でも持つものである。しかし、例えば努力の結果出世したり、立派な肩書がついたり、有名になったとしても、その結果生まれる「根拠のある自信」は、「根拠のない自信」と比較すれば価値が低い。

根拠のない自信は、自分が何者でもないからこそ、持つことができるのである。むしろ、無名でもいい、出世しなくてもいい、今の自分よりもさらに上の自分を目指し、成長するための努力をすることができれば、その人は根拠のない自信を持っていると言えるし、その人生は輝いている。

人間の脳は、「差分」に喜びを感じる。報酬系のドーパミンを分泌する神経細胞は、自分が今までできなかったことができたときに最も活発になる。何者でもない子どもが、自分にできなかったことができたときに、ドーパミンの喜びに祝福されるのだ。

人生は、どれくらい長く生きたかではなく、いかに挑戦し、ドーパミンの階段を上がるかによって決まる。報酬系が活性化すると、前頭葉を中心に神経細胞のネットワークが強靭になり、アンチエイジングにもつながる。

ただ単に長生きを求めるだけでは、「安心安全」の守りの姿勢に入ってしまって、結果として脳の若さが失われることにもなりかねない。大切なのは、生きている時間の中身であり、日々自分の限界に挑戦する姿勢なのだ。

(写真=iStock.com/mapo)

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