人体のコアな位置にあり、22もの筋肉群に多大な影響を与える股関節。その不調は、体全体の不調につながる。正しくケアすることで、股関節自体のこわばりや痛みのみならず、長年悩まされてきた腰痛、膝痛あるいは猫背の改善も期待される。
痛がる中高年の女性
画像=Adobe Stock/buritora

股関節をケアしないと歩行が困難に

人体で最も大きな関節で腰痛、膝痛を引き起こすことも

腰痛、膝痛などに悩む中高年は多いです。長年酷使したせい……そう思って、ぎりぎりまで我慢してしまう人もいるでしょう。もちろん、腰や膝そのものが痛みを引き起こしていることもありますが、実は少し離れたところにある、とある関節の不具合が原因になっていることも意外に多いのです。股関節です。

股関節とは、骨盤と大腿骨をつなぐ、人の体のなかでも最も大きな関節のこと。体の内部にあるためその存在は意識されにくいものの、体の中心部で上半身と下半身をつなぐという重要な役割を担っています。立つ、座る、しゃがむ、歩くなど、人のほとんどの動作に関係している重要な関節なのです。

そのため周辺の関節に影響を与えることも多くなっています。腰痛や膝痛はもちろん、意外なところでは肩痛などに股関節が関係していることも。ほかにも「長時間歩くと、足が重だるい」「椅子から立ち上がるとき、足の付け根に違和感やこわばりを感じる」「靴下をはく、足の爪を切る、しゃがむなどの動作がつらい」などに心当たりがあれば、股関節の問題を疑ってみる必要があるでしょう。

さらに股関節は姿勢の良し悪しともつながっています。股関節の周辺には22にも及ぶ筋肉群があって、その筋肉が弱ることで、骨盤が前に倒れる反り腰や、後ろに倒れる腰猫背になることもあります。歩行にも大きな影響を与えます。片足を引きずる跛は行こうも、膝や足というより、実は大腿骨に原因があったというケースがあります。

ちなみにアメリカの女優マリリン・モンローは、お尻を振りながら歩きやすいようにと、あえて左右のハイヒールの高さを変えて履いたといわれています。一方、股関節の問題から、知らず知らずのうちにモンロー・ウオークになってしまう人もいます。やっかいなのは、変な歩き方になっていることを本人が意識していないことです。診察にも来ないほか、受診したとしても股関節の問題はレントゲンに写らないことも多いため、老化と見落とされることも多かったのです。

こうして加齢だから仕方ないと、股関節の違和感や軽い痛みを放っておくと、やがて痛みがひどくなり、最後には歩行が困難になることもあります。筋肉、骨、心肺機能などの衰えを誘発し、健康寿命を縮めてしまうことも珍しくありませんでした。股関節の不具合が老化を招いてしまうパターンも多かったと言えるでしょう。

このように、ブラックボックス的に捉えられていた股関節の研究が一気に進んだのは、ここ15年余りのこと。2008年、日本整形外科学会と日本股関節学会の2つの学会で、股関節痛の主な原因となっている「変形性股関節症」の診療ガイドラインが初めて作られてからです。同時に検査技術の発達も手伝って、原因不明とされてきた股関節痛のメカニズムも少しずつ明らかになってきました。変形性股関節症の対策を行うことで、股関節痛はもちろん、腰痛や膝痛が改善した人も増えています。

ここで変形性股関節症について、もう少し詳しく紹介していきましょう。これは股関節の軟骨がすり減って変形してしまう疾患のことで、加齢や肥満、激しいスポーツなどですり減ってしまうタイプと、もともとあった股関節の構造異常などが原因となるタイプの2つに分けられます。

前者は、スポーツや重労働などで股関節に過度の負担がかかったケースです。骨盤と大腿骨の衝突などがきっかけで、変形性股関節症の発症が多く認められています。

転倒やつまずきは股関節が原因の可能性

一方後者では、赤ちゃんのときのおむつの付け方や親の抱っこの仕方が股関節に影響を与えているケースもあります。おむつ替えも、抱っこも、足を広げたままなら股関節への負担は少ないのですが、足を閉じたままおむつを替えたり抱っこしたりすると、負担が増えてしまいます。