高齢の父親に免許返納を持ちかけても、頑として応じようとしない。高齢者が重大な事故を起こす報道を見るたびに、人ごととは思えず、生きた心地がしない……。どうしたら親を説得し、免許返納に持ち込めるのか。介護アドバイザーの横井孝治氏に自身の説得経験と相談者の成功例を聞く。

認知症の兆候があるのに頑としてやめない

“高齢者が運転する車が子供の列に突っ込んだ”。そんなニュースを目にするたびに、うちの親も運転免許を返納するべきかと悩む方が大勢いて、年中、相談が寄せられています。

高齢者の運転は本当に危険なのでしょうか。データを見る限り、高齢になればなるほど、重大事故を起こす確率が他の世代に比べ高まります。

2019年の政府発表の統計によると、事故件数自体は65歳以上が飛び抜けて多いわけではなく、20〜24歳がトップになっています。ところが、死亡事故等の重大事故に限り、年齢層別に10万人当たりの発生件数を集計すると、70〜74歳で事故率が上昇し始め、75歳以上でさらに増加します。

また、平成30年に警察庁が実施した、運転時間当たりの死亡事故件数を調べた調査「年齢層別準道路交通曝露量と死亡事故件数」によると、70〜74歳は70歳未満の2.4倍、75〜79歳は4倍、80歳以上は10.6倍もの死亡事故を起こしているのです。高齢者は、ほかの世代と比べて重大事故を起こす確率が高いと言えるでしょう。

70歳になると免許更新時に高齢者講習が、75歳以上は認知機能検査が義務付けられますが、この段階では免許返納の拘束力はなく、多くの認知機能が低下した高齢者が運転しているのが、問題なのです。

実は、かくいう私も、父親の免許返納では苦労しました。両親の住む実家は三重県にあり、大阪で暮らしていた私は、仕事で東京と行き来しながら、遠距離介護をしていました。

ウチの父親の場合、明らかに認知症の兆候があり運転が危なっかしいのに、頑として、やめようとしませんでした。その頃はまだ、免許返納に関する資料が少なかったので試行錯誤の連続でした。その体験が現在の「親ケア.com」の活動につながっています。

あるとき、親が運転する車に同乗していると、国道を思いっきり逆走し始めて目の前から大型トラックが迫ってきました。慌てて助手席からハンドルを切って難を逃れました。通院している病院にタクシーで行ったのに、そのことを忘れて「ワシの車がないがね」と駐車場で大騒ぎしたり……これ全部、実話ですからね。息子としては気が気ではありませんでした。

相談者からもいろいろな体験談が寄せられています。親の運転する車が歩道を走っていたというのもあります。親の車のバンパーが凹んでいる、ボディに擦り傷がある……。認知症で運転能力が低下したドライバーの車には、なんらかのマイナー・アクシデントの痕跡があることが少なくないのです。

これは免許返納を促すサインです。私の父もしょっちゅうそんなことがあり、そのたびに、人身事故を起こしたのではないかと地元警察に電話していたので、警察署に私専用のホットラインができたほどです(苦笑)。