「一発試験」のために広い敷地が不可欠

なぜ運転免許試験場は電車で行けないところにあるのか。この話題は今年の春、ネットをおおいに賑わし、発端となったXの投稿には18万件を超える「いいね」と、多くの共感のコメントが寄せられている。

「この投稿への回答は『運転免許試験場は広い土地がないとつくれないから』ということになります」

と説明するのは、都市問題にくわしい東京科学大学リベラルアーツ研究教育院の柳瀬博一教授だ。

「免許を新規に取得する場合、多くの人は教習所で実技の試験を終えてから、筆記試験のためだけに運転免許試験場を訪れますが、免許取得にはいわゆる『一発試験』という方法もあって、道路交通法及び道路交通法施行規則に基づいて運転免許試験場には普通免許、大型免許、各二種免許、牽引免許などの全免許種別に各種試験項目を行えるコースが備えられています」

コースの仕様については警察庁の通達「運転免許技能試験実施基準」により、長さや幅、カーブの半径まで全国共通の基準が定められている。

日本における乗用車の運転免許制度は、明治時代の1903年に愛知県が先行して「乗合自動車営業取締規則」を発令し、県内で自動車を運転するには運転免許が必要と定めた。これに続いて各府県でも同様の規則が続々と発令され、その後、大正時代の1919年に内務省から全国統一の「自動車取締令」が発令され、自動車の運転には日本全国で免許が必要となった。

「その後に運転免許試験が各地で行われるようになったのですが、最初のうちは規定もアバウトで、空き地に集合して実技の試験を行ったりしていたようです。ただ1930年代には各地に試験場が置かれ始めたようで、例えば1930年には名古屋市東区の旧陸軍工兵隊作業場跡に、愛知県の自動車運転者試験場が置かれた、という記録が残っています」(柳瀬教授)

その後、第2次世界大戦を経て1960年に道路交通法が施行、以後は都道府県ごとに運転免許試験場が整備されることになった。

「現在の運転免許試験場は戦前からあったものと戦後に設置されたものに分かれますが、多くは運転免許取得者が国民のごく一部にすぎなかった時代に計画され、駅から遠い不便な場所に置かれた施設が目立ちます。運転免許試験場は各地の警察及び公安委員会が運営しており、競合はないので、あえて高い土地代を払ってまで便利な場所に試験場を建てる必然性がなかったということです。例外的に都市部でも、工業地帯や埋立地等を利用して、比較的便利な場所に置かれることもありますが、免許が必要な人は不便な場所でもそこに行くしかありません」(同)

「車での来場は控えて」それぞれの設立事情

運転免許試験場は1つしかない自治体と複数ある自治体がある。一番多いのは6カ所の北海道。岩手県が5カ所、青森県と宮城県も4カ所あるが、同じ東北でも秋田県や山形県には1カ所だけと、自治体によって差が大きい。