慢性腎臓病はいまや国民病ともいえるほど多くの人が罹る病気です。少し前まで慢性腎臓病の患者数は日本では成人の「8人に1人」といわれていましたが、最近になって「5人に1人」に改められています。
慢性腎臓病とは、腎機能障害が3カ月以上続いた状態を指します。腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、これといった症状がないまま悪化します。何の不調も感じていない人が健康診断で「クレアチニン」や「尿たんぱく」など、腎臓関連の数値を指摘されて、改めて検査をしてみると「慢性腎臓病がかなり進んでいた」ということが珍しくないのです。
腎臓の大きな役割は血液をろ過してきれいにすることですが、ろ過するためのフィルターを中心とした構造体を「ネフロン」といいます。腎臓はこのネフロンの集合体です。ネフロンの数は、年齢や食生活などによって減っていきます。それに合わせて腎機能は低下します。何も改善しなければどんどん減っていき、腎機能が健康時の15%未満に低下すると末期腎不全になります。ここまで至ると人工透析が必要になります。ただ、慢性腎臓病の患者さんの多くは、透析に至る前に心筋梗塞や脳卒中などの心血管病で亡くなってしまいます。透析まで生き延びた人は、運がいいともいえるわけですが、いずれにしても慢性腎臓病は、命に関わる大変な病気であることを理解してください。
腎臓の不調は全身の臓器に悪影響
腎臓は血液の老廃物を排出して尿をつくるだけでなく、血圧や血液中のナトリウムイオンやカリウムイオンを厳密に調節しています。ホメオスタシスといって、体内が環境に左右されず、いかなるときも正常に働くように維持するしくみです。人体に必要な成分は体液として活用し、不要なものは尿として排泄するよう腎臓が調整することで、全身の臓器がそれぞれ最大限のパフォーマンスを発揮できます。このように中心的存在である腎臓が不調になると、心臓や脳、肺や腸など全身の臓器に悪影響が及びやすいのです。
また、血管石灰化のリスクもあります。血管石灰化は動脈硬化の一種で、血管にカルシウムが沈着して硬くなる状態です。食品などからリンを過剰摂取すると、血液中で「リン」と「カルシウム」が結合して「リン酸カルシウム」になります。そして血管中に沈着するのです。そのため、慢性腎臓病の患者さんが動脈硬化を発症する確率は非常に高くなります。それが心筋梗塞や脳卒中の原因となるのです。
慢性腎臓病では心肥大も起こりやすくなります。心肥大があると心不全のリスクが高くなります。また血管だけでなく心臓の弁にも石灰化が起こります。とくに最近注目されているのは、大動脈弁の石灰化による大動脈弁狭窄症です。これは心臓の弁がしっかり開かず、血液を全身に送り出しにくくなる病気です。とくに人工透析を受けている腎不全の患者さんは、大動脈弁狭窄の進行速度が速いことがわかっています。透析していない人の2倍以上のスピードで進みます。
腎臓が悪くなることで全身の老化が加速することがわかっています。認知症や難聴の症状も出てきますし、筋肉量が減ることによって身体能力が低下するサルコペニアや骨粗しょう症にもなります。皮膚が乾燥して老人のようになり、見た目が老けることも少なくありません。このように慢性腎臓病はさまざまな病気や不調を引き起こし、寿命を縮める原因となります。
腎臓には主に2つの役割があります。①血液から不要な物質を尿に排泄し、血液の量と成分を一定に保つこと、②ビタミンDなどのホルモンをつくることです。腎臓は「人体をいつも通りに維持して動かす」ための管理人のような役割を担っています。
腎臓には、心臓が送り出す血液の約4分の1が流れ込みます。腎臓はその血液をろ過して不要なものや有害なものを取り除き、きれいになった血液を心臓に戻します。血液をろ過しているのがネフロンです。私たち人間には、1つの腎臓にネフロンが約100万個、2つで約200万個あるといわれています。ネフロンの数は年齢とともに徐々に減っていきます。60代、70代になると20代のときと比べ、半分程度になってしまいます。一度減ってしまったネフロンは、回復したり再生したりすることはありません。
ネフロンの減少には「リン」が大きく関わっていることがわかってきました。食べ物などからリンを過剰摂取することで加齢を上回る猛スピードでネフロンが減っていくのです。一方でリンは生き物が生存するうえで欠かせない物質でもあります。最も大きな役割は骨の形成と維持です。体全体で必要とするリンの約80%は骨の成分として利用されています。残りの約20%は細胞膜の成分や体内でエネルギーを生み出すためのATP(アデノシン三リン酸)サイクルに利用されています。
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