健康診断で「肝臓が悪い」と指摘されたけど、体は元気だから大丈夫――。そんな考えは甘すぎる。肝臓が悪くなれば、あらゆる病気の原因になる。自覚症状がないまま進行する恐ろしい肝臓病の正体とは。
肝炎ウイルスのイメージ
写真=iStock.com/Rasi Bhadramani
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PART1 お酒を飲まない人も脂肪肝に。なぜ放置すると危ないか

毎年、健康診断で「脂肪肝(脂肪性肝疾患)」を指摘されているけれど、よくならないのが当たり前になっている――。身に覚えはありませんか。体調に影響がないために放置してしまう人は少なくありませんが、実は、脂肪肝は非常に危険な症状です。

本来、脂肪は皮下脂肪や内臓脂肪といった脂肪組織に蓄えられます。しかし、糖質や脂質の過剰摂取が続くと、本来蓄積されるべきでない臓器の細胞にまで脂肪がたまるようになる。これを「異所性脂肪いしょせいしぼう」と呼びます。脂肪肝はその代表例。日本人は成人の3人に1人が脂肪肝という報告もあります。

脂肪肝が増え始めるのは、男性は30代から、女性は女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減り始める40代後半からです。脂肪肝は一般に、腹部超音波検査やCT、MRIを使って診断されます。脂肪肝になった肝臓は、高級食材・鴨のフォアグラにそっくり。正常な肝臓は血液を多く含む赤い色味ですが、脂肪がたまると黄白色を帯び、見た目も大きく変化します。肝臓細胞の5%以上脂肪が蓄積された状態が脂肪肝とされますが、画像診断で異常が認められ、医療機関で診断されるのは30%以上になってから。初期は自覚症状こそないものの、細胞内の脂肪が肝臓の働きを邪魔し始めます。

【図表】脂肪肝チェックリスト

これまで、生活習慣病の原因は肥満にあると考えられてきましたが、近年の研究では脂肪肝こそが病気の発端、「万病のもと」であることがわかっています。2003年に慶應義塾大学の伊藤裕いとうひろし教授が「メタボリックドミノ」という概念を世界で初めて提唱しました。生活習慣病はある日突然起こるのではなく、ドミノ倒しのように連鎖的に発症していくという考え方で、このメタボリックドミノの初期段階に位置するのが脂肪肝です。

脂肪肝が起点となり、糖尿病、高血圧、動脈硬化、心血管疾患、さらにはがんへと次々に病気が進行していきます。脂肪肝を罹患していない場合と比べて、大腸がんは約3倍、乳がん・食道がんは約2倍、脳梗塞・脳出血などの脳血管障害は約1.8倍、心不全は約2倍と、がんや脳・心血管系疾患のリスクが飛躍的に高まることが明らかにされています。脂肪肝は肝臓だけの問題ではなく、全身の病気を引き起こす重大なリスク因子なのです。

脂肪肝の原因は、脂質より糖質の摂りすぎだった

脂肪肝の原因として多くの方がイメージするのはお酒の飲みすぎでしょう。しかし、決して「お酒を飲まないから安心」というわけではありません。

確かに、初期のアルコール性肝障害と診断される人の9割以上が脂肪肝も併発しています。アルコールは異所性脂肪の生成を促進させ、肝臓で脂肪をつくるスイッチを入れる薬物なのです。さらに、肝臓内の脂肪酸を増やすだけでなく、その脂肪をエネルギーに変える工程(ベータ酸化)を妨げる作用もあります。お酒を飲んでいる人が脂肪肝の改善を本気で目指すなら、まずは飲酒量を減らすことが不可欠です。

その一方で、近年はアルコールをほとんど飲まないのに発症する「MASLD(マッスルディー:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」が急増しています。24年までは「NAFLD(ナッフルディー:非アルコール性脂肪性肝疾患)」と呼ばれていた脂肪肝とほぼ同じ疾患概念です。

MASLDの最大の原因の一つが、主にトウモロコシからつくられる異性化糖です。食品原材料の「果糖ブドウ糖液糖」として知られており、清涼飲料水、スポーツドリンク、ジュース、加工食品などに多く含まれています。

なぜ果糖ブドウ糖液糖が危険なのか。そのポイントは果糖(フルクトース)の代謝経路にあります。ブドウ糖(グルコース)は筋肉や脳など全身で使われますが、果糖はほぼ100%が肝臓で代謝されます。果糖はブドウ糖よりも中性脂肪の合成に使われやすく、過剰に摂取すると肝臓に脂肪が蓄積しやすく、脂肪肝のリスクが高まります。