小泉純一郎元首相は猥談の名手。自民党総裁選に出馬するかどうかを取りざたされていたときに、こう漏らした。

「田中真紀子さんに『立つの、立たないの?』って言われてね。そんなの、女性に言われたって困るよ」

もっとも、三木氏によれば小泉さんも失格だ。

「女性の前で『立つの、立たないの?』は、言いすぎです。大事なのは、相手が困るような冗談を言っちゃいけないということです。それを聞いて自然に笑い始めるような内容でないと」

政治の話題も難しい。たとえば接待の席で、

「今なら原発の是非について話すのは難しいと思います。大企業の人は、仕事上の関係もあって僕らとは意見が違ったりしますから。気をつけて口を開かなければいけないですね」(三木氏)

一方、次のような小話は無条件にほほえましい。すべて宗次氏の体験談だ。

「壱番屋が東証一部に上場したとき、ある経営者に『一部上場しました』と報告したら、その人は『一部だけ上場して、あとはどうするんですか?』。『今日はご説明しません』と答えておきました」

「今朝、うちの嫁さんに言われました。『このラ・フランス男!』。『どういうこと?』『洋梨(用なし)』」
 「『あーあ、もう青森と山形の間』『どうしたの?』『秋田(飽きた)』」

壱番屋創業者特別顧問 宗次徳二
1948年生まれ。生後すぐに孤児院へ預けられ、宗次家の養子に。愛知県立小牧高校卒業後、大和ハウス入社。その後独立し、78年カレーハウスCoCo壱番屋創業。98年会長、2002年より現職。07年クラシック専門の宗次ホール設立、代表に就任。著書は『日本一の変人経営者』ほか。
詩人、作家 三木 卓
1935年生まれ。幼年期を満州(中国東北部)で過ごす。59年早稲田大学文学部露文科卒。71年『わがキディ・ランド』で高見順賞、73年に『鶸(ひわ)』で芥川賞、97年『路地』で谷崎潤一郎賞など受賞歴多数。99年紫綬褒章、2011年旭日中綬章を受章。児童文学も多く手がける。
(的野弘路、山口典利=撮影)
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