デキる人は休みを「ルーティン化」する。休みは「非日常」ではない
――先ほど「平日5日間にやらなければいけないタスク、達成しなければならない目標から逆算して、土日2日間にどれくらいの活力を蓄えればいいのかを考える」とおっしゃいましたが、自分が何をすればどれくらい活力が蓄えられるのか、どう把握すればよいのでしょうか?
片野:“勤務間インターバル”を使って、ルーティンを見つけるのがいいと思います。
勤務間インターバルは、勤務が終わってから翌日の勤務までの時間のこと。休むうえでは、通勤時間や食事時間、家族と過ごす時間などをどうマネジメントするかが大切です。
そのなかで、パフォーマンスを出すことにつながった過ごし方を、きちんと振り返って記録してもらいたいんですよ。「この時間に寝たときが良かった」「こういう行動をしたら疲れが取れた」というのが見つかったら、あとはそれを繰り返していく。
活躍しているアスリートや経営者にはルーティンを守っている人が多いように、皆さん一人ひとりにベストな休みのルーティンがあるはず。自分自身の生活パターンを捉えて、セルフコントロールしていくことで、より高いパフォーマンスが出るようになると思います。
――「休みもルーティンだ」という考え方は面白いですね。いわゆる「ウィークエンド思考」で生活していると、ついつい休みを「非日常的なもの」だと捉えてしまいがちです。
片野:将来的に今より高いポジションを目指したい、より良いパフォーマンスを出したい、と考えるのであれば、セルフコントロールは欠かせません。休みの取り方はセルフコントロールに直結しているんですね。
人と交流するのも立派な休み。タイプの違う休養を組み合わせて自分に合ったルーティンを作ろう
――休みの捉え方を理解したところで、先ほど「勤務間インターバルの過ごし方を考える」という話も出ましたが、どんな「休み方」が疲れを取るために効果的なのか、教えていただけますでしょうか?
片野:「今の休み方ではパフォーマンスが出ない」と感じているならば、やはり“攻めの休養”が必要でしょうね。
――攻めの休養?
片野:自分自身で休み方をデザインするということです。
私は、休養を「生理的休養」「心理的休養」、そして「社会的休養」の3つに分けて考えているのですが、それをさらに分解した、7つの休養モデルをうまく組み合わせることで、疲労回復効果が2倍にも3倍にもなるんです。
――3倍にも! 7つの休養モデルにはどのようなものがあるんですか?
片野:まず、「生理的休養」には、睡眠や休憩などの「休息タイプ」、適度に身体を動かす「運動タイプ」、食べる量や回数を抑える「栄養タイプ」があります。
次に、「心理的休養」には、人や自然と交流する「親交タイプ」、趣味・嗜好を追及する「娯楽タイプ」、創作活動をする「造形・想像タイプ」があります。
そして、「社会的休養」には、まわりの環境を変える「転換タイプ」があります。
これら7つのタイプを知っておけば、仮に睡眠不足の時も、その補助として、自分自身にぴったり合った休み方を見つけられると思います。
【さまざまな休養の種類】
生理的休養……休息タイプ(休憩する、寝る、ゴロゴロするなど)
……運動タイプ(ウォーキング、トレーニング、ストレッチなど)
……栄養タイプ(体に優しい食事を摂る、食事量を抑える、断食するなど)
心理的休養……親交タイプ(雑談をする、親しい人と触れ合う、自然に触れるなど)
……娯楽タイプ(本を読む、音楽を鑑賞する、推し活をするなど)
……造形・想像タイプ(絵を描く、文章を書く、DIYをするなど)
社会的休養……転換タイプ(部屋の模様替えをする、旅行に行く、買い物をするなど)
――休養にもさまざまなタイプがあるんですね。人と交流することが休養に繋がる、というのが意外です。
片野:もちろん、人と触れ合うことでストレスを感じる人もいるので、上手に使い分けていただきたいとは思っています。大切なのは複数のタイプを組み合わせること。携帯電話にたとえるなら、一気に充電するのではなく、いろんな場所で小まめに充電していくイメージです。
「娯楽タイプ」の映画を観て20ポイント。「転換タイプ」の部屋の模様替えをして20ポイント。そして「休息タイプ」の睡眠で40ポイント……というように。
――さまざまなタイプを組み合わせながら、自分に合ったルーティンを見つけていくと。
片野:そうですね。この休養モデルを知っているだけでも、行動が変わってくると思います。例えば、スープを飲んでほっと一息つきたいとき、通常ならインスタントを選ぶかもしれないけど、冷蔵庫にある余った食材を混ぜてみるだけで、「造形・想像タイプ」の休養に変わるわけです。
さらに、スープを誰かと一緒に作れば「親交タイプ」に、出来上がったスープを持って近くの公園まで行けば「運動タイプ」「転換タイプ」も組み合わせられるかもしれません。
このように、モデルを知っていれば、自分の生活環境のなかで複合的に休みを取れるようになるんです。
――休みの捉え方、そして休み方に対する解像度がグッと上がりました。今日から休む前に「良いパフォーマンスを出すためにどう休むべきか」と考えられそうです!
片野:それはよかったです。「休み方」が変われば、働き方やキャリアも変わる。そう信じています。
取材・文:いしかわゆき 写真:佐坂和也 編集:はてな編集部 制作:マイナビ転職