食卓に魚料理が並ぶ機会が激減している。どうすれば気軽に魚料理の頻度をあげられるか。元水産庁職員の上田勝彦さんは「刺身やサクで買うと割高になる。例えばマグロならコロというカタマリで買うと血合いや皮もついてきて、メニューのバリエーションが増え食べ応えがある」という。ライターの大宮冬洋さんが実践した――。
家庭用のまな板からはみ出すぐらい大きなマグロのコロ(カタマリ)。重さ1.7キロ!
筆者撮影
家庭用のまな板からはみ出すぐらい大きなマグロのコロ(カタマリ)。重さ1.7キロ!

肉の消費量が魚を逆転してはや14年

日本人は魚と肉のどちらが好きなのか。データでは残念ながら魚が負け続けている。農林水産省の食料需給表によれば、食用魚介類の一人当たりの年間消費量は2023年度で21.4キロ。ピーク時の2001年度は40.2キロだったのでほぼ半減している。一方の肉類の消費量は増加し続けていて、2011年度に魚を逆転。2023年度の消費量は33.9キロに達している。

とはいえ、回転寿司はたいてい盛況だし、デパ地下の刺身や寿司のコーナーにも客足は絶えない。「新鮮な魚はやっぱり旨いよね。魚にもまだ勝機はある!」と思えてくる。外食や中食はどうしても高くつくし食べ飽きるので、我々消費者がいかにお得にかつ美味しく自炊できるかが魚食復活の分かれ目になるだろう。

マグロの中でもお手頃価格なのは…

お得な買い物に不可欠なのは自分の好みを細かく知ることだ。例えば、マグロ。クロマグロはやたらに珍重されて初競りだと億単位の値がつくけれど、あの濃厚な味がそれほど好きでないのであれば、さっぱりした味わいを楽しめるキハダマグロ(以下、キハダ)を買えばいい。ビンチョウマグロと並び、マグロの中では比較的安価だ。

「さっぱりしているという言い方もあるとは思うけど、噛みゆくほど次第に伝わるクセのない旨味と、飲み込んだ後の余韻が短くてキレがあるのがキハダの特徴だね。だからこそ次のひと切れに箸が出る。濃厚で血の味が強く噛み始めから直球で伝わるクロマグロやメバチの旨味とは別物。キハダはお腹いっぱい食べても飽きない。酒も飲めるが飯も食える」

キハダの魅力を存分に語ってくれるのは、元水産庁職員で「魚の伝道師」の異名を持つ上田勝彦さん。現在は神奈川県鎌倉市にある鮮魚店「サカナヤマルカマ(以下、マルカマ)」にアドバイザーとして入っている。前回は小魚のマイワシを教えてもらったので、今回は100倍以上の大きさがあるキハダを「丸ごと」味わう方法を聞きたい。

これが今回のキハダマグロ。46キロもあり、マルカマの女性スタッフでは持ち上げられなかったようだ
写真提供=サカナヤマルカマ
これが今回のキハダマグロ。46キロもあり、マルカマの女性スタッフでは持ち上げられなかったようだ