発想力とスピードで海外市場に勝負!

ユニ・チャームは1990年代から「本業多角化・専業国際化」をスローガンに海外展開を本格化させてきたが、そのポリシーは、当初からまったくぶれていない。

弊社の事業を改めて定義してみれば、一般消費財、しかも日用品の製造業である。この事業には、製品の本質に由来するひとつの特徴がある。サービス業とは異なって、1人当たりGDPが1000ドルを超えれば生理用品が売れ始め、3000ドルを超えるとベビー用紙おむつが普及の成長期に入るといった、国内事業で培った「物差し」が、海外にもそのまま通用するのである。

従って、海外展開の勝負どころは、その国のGDPレベルが一定のラインに達して製品の普及が始まった瞬間、すなわち製品のライフサイクルの成長前期に、確実に、そして効率的に果実を取りにいくことに尽きる。その際、マスのデータを下から積み上げていって、こういう状況だからこの商品を持っていくのがいい、このチャンネルを使うのがいいと、総合的な判断を下してからアプローチを始めようとすると、どうしても展開スピードが遅くなる。

そこで弊社の場合、仮説を立てたら、たとえ片目をつぶってでもマーケットで実行に移してしまうのである。その結果を即座に検証して、失敗ならばすぐさま仮説を修正し、再び実行に移す。

未開のマーケットで効率的に普及させるには、この仮説・検証のサイクルをすばやく回していくことが最も実効性が高い。発想力とスピードを武器にするのだ。そしてユニ・チャームの社員は、SAPSによって、その訓練を日ごろから積み重ねているのである。

さて、こうしてみると、弊社はいかにもベタなことを「しつこく」やり続けているだけである。このしつこさはオーナー系企業の本質に根ざすものだろう。自分の会社だと思えばこそ、私は経営に渾身の力を注ぐことができ、会社をよくすることに何の迷いもなく自分の時間を突っ込める。その成否は、幹や枝葉の部分ではなく「根っこ」の部分、つまり「本質が何なのか見極められるかどうか」にかかっている。モノ、ヒトの本質に根ざしたことには、ぶれが生じないのである。

※すべて雑誌掲載当時

ユニ・チャーム社長 高原豪久
1961年、愛媛県生まれ。山手学院高校、成城大学経済学部卒業。86年三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。91年ユニ・チャーム入社。94年嬌聯工業股份(台湾)副董事長、95年ユニ・チャーム取締役、97年常務就任。サニタリー事業本部長、国際本部担当、経営戦略担当を歴任し、2001年より現職。
(山田清機=構成 的野弘路=撮影)
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