目標は高く「世界一」カリスマ以後の組織とは

ユニ・チャーム社長 高原豪久 たかはら・たかひさ●1961年、愛媛県生まれ。86年、成城大学経済学部卒業。同年三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。91年ユニ・チャームへ。95年取締役、97年常務を経て、2001年より現職。

学ぶとは、まねぶ、つまり真似をすることである。では、何を真似るのかといえば、それは「型(かた)」だ。だが、型を知識として理解するだけでは、学びにはならない。仕入れた知識を行動に移して自身の変化を実感し、血肉化したとき、人は初めて学ぶのである。

私がカリスマ経営者・高原慶一朗から社長の椅子を禅譲されたのは、2001年6月のことだった。一般にマスコミは新社長の就任に声援を送ってくれるものだが、就任間もない8月28日付の「日経金融新聞」の記事は、「成長鈍化が鮮明になってきた」として業績悪化を厳しく指摘するものだった。記事の内容に間違いはなかったが、これを読んだときの悔しさが、ユニ・チャーム独自の「SAPS(サップス)経営」を生み出す契機となった。

SAPS経営を導入する前段階で、私は多くの経営書を読みあさったが、優れた経営書の論旨は、わずか2点に要約できた。ポジショニング(他社との差別化)とケイパビリティー(組織的な能力)の重要性である。

ユニ・チャームは基本的に消費財を扱う。日本の商品は高品質だが、それでもコモディティー化は免れない。「このオムツは、使ってもらえば全然違いますよ」と自信を持って言えなければ、安売り競争に足を掬われる。言い換えれば、現在のデフレの原因は、メーカーが消費者の期待値や欲望を上げ切れていないことにあるのだ。