人口減少が進んでいくにもかかわらず、タワーマンションの建設が続いているのはなぜのか。明治大学政治経済学部の野澤千絵教授は「昨今の再開発事業は、必ずと言っていいほど、タワーマンションの建設がセットとなっている。その背景には、再開発で得られる容積率等の規制緩和、再開発事業の構造、自治体の人口獲得競争などが影響している。最新の東京都による世帯数予測(令和6年3月)によると、東京ですら2025年には住宅購入年齢層(25-54歳)の世帯数のピークアウトする見込みとなっている。本格的な人口減少時代を見据え、拡大志向を中心とした都市政策を根本的に転換していくことが急務だ」という――。(第2回)
※本稿は、NHK取材班『人口減少時代の再開発』(NHK出版新書)の一部を再編集したものです。
なぜ「再開発ラッシュの時代」になったのか
こうしている現在も、日本のどこかで市街地の再開発が着々と行われている。いわば、再開発ラッシュの時代となった。
では、なぜ今、こんなに再開発が相次いでいるのだろうか?
それは、戦後から高度経済成長期にかけて整備された駅や駅前広場、バスターミナルなどが、50年以上経って老朽化していたり、時代にそぐわなくなるなど、ちょうど更新しなくてはいけない時期に入っているからである。また、駅前などの土地が細分化していたり、建物が老朽化し、都市にとって拠点となるべきエリアにもかかわらず、防災上の問題があったり、利用効率が悪い状態になっていることもある。
そこで、市街地再開発事業という手法が全国各地で使われるようになった。これは、区域内の建物を除却し、新たなビルの建設にあわせて、不足していた道路・公園・広場などを整備し、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図ろうとする事業である。そのため、「公共性」が高い事業とされている。
都市再開発法に基づく法定の市街地再開発事業には種類が2つある。その一つは、権利変換方式で進める「第1種市街地再開発事業」、もう一つは公共性・緊急性が著しく高い区域を対象にした用地買収方式の第2種市街地再開発事業」である。近年、行われている市街地再開発事業の大半が「第1種市街地再開発事業」であり、その多くが地権者等による市街地再開発組合や再開発会社が主体の事業となっている。