民間主導を重視するあまり“金太郎アメ”化している

しかし、昨今の再開発ラッシュで生み出される空間は、低層部に多少の商業施設(多くはチェーン店舗)や公共施設が入り、それ以外の床はほとんどがタワーマンションであるような、地域固有の魅力や個性を無視した“金太郎アメ”化した開発が増えてしまっている。ただ、この背景には、近年の商業やオフィスの床需要の減少や建設費高騰などの要因があるのも事実である。

本来の都市再生の主旨から見ると、民間側からの提案制度というのは、民間の資金や創意工夫によって自治体だけではできないような都市再生を期待するものであったはずだ。しかし、民間側は、営利企業であるので当然なのだが、どうしても創意工夫よりも事業の推進とリスクの低減、収益の最大化が主眼となりがちである。

その中で、自治体側が設定している容積率割り増しのための公共貢献メニューの中からなるべく事業に有利になるよう選択しながら方程式を解こうとする。その結果、どこも同じような構成、空間になってしまったと捉えることもできる。

災害対応や維持管理問題の解決策が見いだせないのに……

こうした再開発事業で生み出されることが多いタワーマンションだが、そもそもタワーマンション自体にさまざまな問題点がある。まず、近年多発する想定外の災害への対応だ。

多くのタワーマンションでは非常用電源や備蓄が装備されている。受水槽があるため、短期間の断水には耐えられると言われている。とはいえ、地震・水害などで想定以上の長期にわたる停電・断水となった場合、エレベーターが使えなくなるため、上層階に水を運ぶことが難しくなる。また、猛暑の時期に長時間停電した場合、命に危険が及ぶ事態になりかねない。

2019年10月13日に台風19号が大雨を伴った朝の多摩川下流域の風景
写真=iStock.com/Free art director
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こうした状況からタワーマンション内で暮らし続けることができなくなると、地域の避難所のキャパシティは圧倒的に不足する。交通が麻痺した状況になると他の地域に移動することもできず、行き場のない多くの住民が地域にあふれる事態も懸念されている。

さらには、分譲マンションの維持管理に関する問題がある。

分譲のタワーマンションには、多種多様な年齢層・国籍・生活状況の区分所有者が一つの建物に大量に入居している。維持管理はそうした人々の合意形成に基づいて行われことになるため、今はまだ問題が何も生じていなくても、30年、50年と時間が経ち、設備が老朽化していく中で、大規模修繕や修繕積立金の増額などの対応は、区分所有者同士の合意形成という不安定な人的要因に大きく影響されることになる。