大幅な規制緩和と民間主導で進める「都市再生」

昨今の再開発ラッシュには、もう一つの要因がある。それは、「都市再生」をキーワードにした規制緩和政策である。1980年代の中曽根康弘政権以降、公民のパートナーシップ型の開発を進め、都市開発において民間の投資を呼び込むための規制緩和政策が繰り返されてきた。

特筆すべきは、2000年代の小泉純一郎政権下で始まった政策である。

小泉政権は、大量の不良債権を抱えたバブル崩壊後の経済対策の一つとして、「都市再生」をキーワードに、不動産の流動化や民間主導による市街地の再開発を推進しようと、2002年に「都市再生特別措置法」を制定した。

都市再生特別措置法には、国が指定した都市再生緊急整備地域で都市再生事業を行う者が、事業のために必要な都市計画の決定や変更(容積率の割り増し等)を提案できるという大幅な規制緩和を可能とする制度が盛り込まれた。

さらに、自治体により「都市再生特別地区」に指定されると、現行の用途地域や容積率などの規制がすべて適用除外となり、民間事業者にとって非常に自由度が高い開発計画を進めることを可能とした、いわば都市計画の特区とも言える制度も創設された。

都市再生緊急整備地域は、2023年9月1日時点で、全国で52地域、約9539ヘクタールに指定されている。

東京都では「住宅供給=公共貢献」とされタワマン建設が進む

東京都を例に挙げると、小泉政権の規制緩和と並行するように、石原慎太郎知事時代の2001年に「東京都の都市づくりビジョン」を策定(2009年に改定)し、都心部を中心にセンター・コア・エリアなどのゾーンを定めた。その際、バブル期に地価が高騰し、都心部の人口が大幅に減少していたこともあり、「都心居住の推進」と「市街地の再開発の推進」を打ち出した。

建設現場
写真=iStock.com/7maru
※写真はイメージです

小池百合子知事の就任後、「都市づくりのグランドデザイン」に改定されたが、上述の「都心居住の推進」と「市街地の再開発の推進」という方針は大きく変えられることはなかった。

こうした方針をふまえ、東京都では容積率割り増しを行える対象や要件を定めることで、容積率を割り増しする代わりに、民間開発の「公共貢献」によって都が掲げる政策への誘導を図ろうという仕組みが構築されていった。

この公共貢献として認めるものには、例えば、地域に不足する道路・歩道・広場・緑地等、保育園などの子育て支援施設、高齢者施設、帰宅困難者のための一時避難スペース、地下鉄出入口の設置などとされている。そして、この公共貢献として認める対象の中には、「住宅供給」も含まれている。(※この仕組み・要件は東京都独自である。他の自治体でも独自に設定しているところがある)

要するに、タワーマンション建設=都心居住のための「住宅供給」=公共貢献と評価され、容積率の割り増しというメリットが得られる構図となっているのだ。