仕事が忙しくてクタクタのとき、効果的に休める方法はあるのか。労働者メンタルヘルスの専門家である佐藤恵美さんは「1日6時間以下の睡眠を続けると、脳の認知能力が酒に酔った状態に近いレベルまで下がるという研究結果もある。『まだ大丈夫』と思っているうちに『もう一歩も動けない状態』になってしまう」という――。

※本稿は、佐藤恵美『職場の同僚のフォローに疲れたら読む本』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

ノートパソコンで作業をするビジネスマンと時計
写真=iStock.com/Midnight Studio
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燃え尽きる前に自分をケアしよう

職場で人をフォローするような面倒見のいい人は、たとえ休む必要があると気づいても、「やるべきことが終わらないと休めない」などと考えて、なかなか自分のために時間を使うことができません。

ただ、人間のエネルギーは無尽蔵ではありません。「まだいける」「まだ大丈夫」と思っているうちに、「もう一歩も動けない状態」になるのです。

これは決して比喩的な意味ではなく、うつ状態になると、ある朝、突然起きられなくなります。まさに「もう一歩も動けない状態」です。

うつ状態は、「もうがんばらないで」という体からのメッセージだといえます。体が強制的にストップをかけなければならなくなる前に、自分で自分をケアすることが、とても大切です。

セルフケアのファーストステップは「睡眠」

まずは、なんといっても必要なのが睡眠です。

睡眠は、脳と体を休ませるために、最も重要な営みです。特に、心のエネルギーを司る脳の休息が充分でないと、どんなにがんばろうとしてもうまくいきません。

ある研究では、6時間以下の睡眠を続けると、昼間の認知能力が著しく低下することが指摘されています。この研究をわかりやすく解釈すると、5〜6時間しか睡眠をとれていない状況が1〜2週間続くと、日中にまるでワインを2〜3杯飲んだのと同じくらいの思考力しか保てないということです。

つまり、睡眠不足で仕事をするのは、かなり酔っぱらった状態で仕事をしているのと同じなのです。

そんな状態では、当然、頭はうまくまわらず、物事を冷静に考えられません。イライラ、モヤモヤ、不安、落ちこみなどが大きくなり、あなたの本来の能力や魅力をまったく発揮できないし、大失態にもつながります。

人のフォローをする場面でも、相手の状態をきちんと把握して、自分の感情をコントロールしながら対応することが難しくなります。

もし職場でフォローしている相手にイライラすることが増えたり、きつい言い方をしたりといった感情が乱れる場面に少しでも心あたりがあるとしたら、まず自分に問いかけてみてください。

「最近、眠れているかな?」

NOという人は、なによりもまず睡眠をとることを最優先事項としてください。これなしには、なにもはじまりません。