家庭で子どもに「お金の教育」をするにはどうすればいいか。金融教育家の上原千華子さんは「子どものお金の価値観は親からの影響を強く受ける。『うちにはお金がない』といったネガティブな言葉は、必要以上にケチケチするマネー習慣を植え付ける可能性があるので、オープンでポジティブな対話を心がけるのがおススメだ」という――。
夕暮れ時に手をつないで歩く親子
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12歳までに脳は「完成」する

「お金は人を幸せにするもの」「お金は不幸のもと」人によってお金に対するイメージはさまざまです。「お金とは○○だ」といったお金の価値観は、どうやって作られるのでしょうか? まずは、一般的な価値観の形成プロセスを見ていきましょう。

子どもの脳は、幼少期に驚くべきスピードで発達します。スキャモンの発育曲線によると、6~9歳までに脳を含む神経回路の9割、12歳までに残りの1割が完成するといわれています。

この時期に形成されるのは、知識やスキルだけではありません。「非認知能力」と呼ばれる心の土台も大きく発達します。「非認知能力」とは、自己肯定感や自制心、協調性や共感力などの能力です。スポンジのように周りの出来事をグングン吸収していくため、両親や身近な人の行動が子どもに大きく影響を与えると考えられます。

【図表1】スキャモンの発育曲線
出典=上原千華子『「お金の不安」をやわらげる科学的な方法 ファイナンシャル・セラピー』(日本能率協会マネジメントセンター)より

「ダメな子だ」という言葉が残す“傷”

社会学の観点からも見てみましょう。モリス・マッセイ(Morris Massey)博士の研究によると、人の価値観は21歳までに作られます。特に7歳までの影響が一番大きいといわれており、以下の3つの時期に分けて価値観が形成されます。

・刷り込み期(0~7歳)

7歳までは、親や家庭環境からの影響を非常に強く受けます。子どもは親の言動を通して見たこと、聞いたこと、感じたこと全てから、価値観や思い込みを作り上げていきます。プラスの体験なら、ポジティブな価値観が作られて自己肯定感が高まります。ネガティブな体験は要注意です。「ダメな子だ」と言われて育った子どもは、深刻なトラウマを抱えることになります。

・モデリング期(8~13歳)

小学2年生~中学1年生くらいになると、子どもは親以外の大人やメディアからも影響を受け始めます。これをモデリングといいます。友達や学校の先生、テレビやインターネットなどから情報を取り入れ、自分に合う価値観や立ち振る舞いを吸収していきます。同時に、あまり好きではない価値観も明確になってきます。

・社会化期(14~21歳)

中学2年生~21歳は、主に仲間から大きな影響を受けます。社会の一員としての自覚を持ち、自立への準備を進める時期でもあります。自分と似た価値観の人とつき合いながら、さまざまな価値観に触れていきます。