幸せな人生を送るには、どうすればいいのか。小説家の真山仁さんは「『老後のお金が不安』『お金持ちになりたい』などと言う人が多いが、そのお金を何に使うのかを明確に答えられる人は少ない。もっと『幸せ』について疑うべきだ」という。新著『疑う力』(文春新書)より、「日本人の不幸の源泉」について紹介しよう――。
ほしい「何か」を持たない人が多すぎる
日本人は、「金持ちになりたい」と言う割には、金持ちになって何がしたいのかを答えられません。本来、お金は、何かを手に入れたいから、欲するもののはずなのに。
「お金があると幸せになれる」「志望ランキング一位の会社に就職すれば幸せになれる」と信じている若い人たちが多いのですが、「そんなの、ほんとか?」と私は思います。
私は、学生たちに「どの会社に入りたいかではなく、何になりたいかを考えよう」とよく話します。というのも、何になりたいかが分かっていれば、そこに向かうアプローチの方法はいくらでもあるからです。一本道ではない。たくさんの中から選んでいけばいい。
しかし、多くの若者は、その「何になりたいか」を見つけられずにいます。
若者に限らず、この国の人たちは、欲しい「何か」、目指すべき「何か」がない。だから、とりあえずお金さえあればいいと思ってしまう。
貧しさにあえぎ、食べるものもろくになかった時代なら、「いつかお腹いっぱい白いご飯を食べたい」と欲して、それがかなえられた時には大きな幸せを感じられました。
とても分かりやすい幸せの形です。
こんなふうに考えてくると、なんとなく充たされない、だから幸せじゃないと思っているのは、自分が本気で手に入れたいものを見つけられていないからかもしれません。
「最近、自分で考えたくないし決めたくもないという人が増えた気がします。何かしらいいものを与えてもらえるのを待っている」(太字は受講生たちの事前レポートより一部抜粋、以下同)