予算案は自公維の賛成で年度内成立へ
重要政策の方針の二転三転による混乱、政治とカネにまつわる不信感は、いずれも政権にとって命取りになりかねない問題だ。3月に入ってこれらの災いが参院で予算案を審議中の石破茂政権に振りかかっている。野党はそろって首相の進退に言及し、内閣不信任決議案の行方が焦点に再浮上している。7月の参院選を控え、首相の求心力は一気に低下し、与党内からも批判の声が高まっている。
少数与党の石破政権が大きな関門の一つとされた2025年度予算案の衆院通過に漕ぎつけたばかりだった。内閣が提出した予算案と税制改正関連法案の両修正案は3月4日の衆院本会議で、自民、公明の与党と日本維新の会などの賛成多数で可決され、参院に送付された。これで4月2日の自然成立(年度内成立)にメドがつき、石破首相らも一息つけるはずだったが、落とし穴が待っていた。
「私の判断が間違いだった。申し訳ない」
まずは、医療費が高額になった場合に患者の負担を抑える「高額療養費制度」について、8月から自己負担上限額を引き上げる方針の見送りに至る迷走である。
当初の方針は野党や患者団体の批判を受けて2度の軌道修正を図ったが、公明党や参院自民党の「7月の参院選に影響する」との危機感を受け、3月7日に首相が8月からの引き上げ見送りを表明するという3度目の軌道修正に追い込まれたものだ。
石破首相は3月13日、予算案の参院での審議中に特例で開かれた衆院予算委員会で「私の判断が間違いだった。大変申し訳ない」と陳謝した。この間に露見した首相の決断力のなさ、政府・与党内調整のもたつきは、政権運営を不安定化させる要素を含んでいる。
そこに追い撃ちを掛けたのが3月13日に発覚した、石破首相が3日に首相公邸で開いた自民党当選1回の衆院議員15人との会食に際し、首相の秘書が事前に1人10万円分の商品券を配布していた問題だ。首相は13日深夜、記者団に配布を認め、「政治資金規正法上の問題はない」などと釈明に追われた。
野党は一斉に反発した。予算案修正案の衆院採決で賛成した維新の会の前原誠司共同代表は14日の記者会見で「一種の買収だ」と非難し、予算案の参院での賛否について「党内で話し合いをしたい」と述べるにとどめた。
派閥のパーティー収入の不記載事件で失った信頼の回復途上にある自民党は、総裁が自ら引き起こした政治とカネの問題で、国民世論からも見放されようとしている。