「試行錯誤、暗中模索のところがあった」
自民党の石破総裁、公明党の斉藤鉄夫代表、日本維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)の3党首が2月25日に交わした予算案修正の合意文書には、予算案と税制改正関連法案について「所要の修正を行ったうえで、年度内の早期に成立させる」と明記された。
維新の会は3月1日、都内で開いた党大会で、7月の参院選について「与党の過半数割れを実現し、さらなる公約の達成を目的とする」とした25年の活動方針を採択した。
維新は、党内に「与党に協力しすぎる」との批判もあったが、3月3日の両院議員総会で、多数決で与党の税制修正案に賛成することを決めた。自公維3党幹事長は即日、合意文書に署名し、「年収の壁」を178万円を目指して25年から引き上げる、ガソリン税に上乗せされた暫定税率の廃止することで、自公両党が「誠実に対応する」と明記されている。
首相は3月4日、予算案の衆院通過に当たって記者団に「試行錯誤、暗中模索みたいなところがあった」と他人事のように語った。案件ごとに連携相手が異なる与野党協議について、首相は自民党の森山幹事長や小野寺五典政調会長、宮沢洋一税調会長らに任せきりで、自らリーダーシップを発揮する場面はほとんどなかった。一連の協議では、財源や政策効果の議論は棚上げされたまま、野党が減税や給付を求めて世論受けを競い、与党は一方的に妥協するばかりだったのである。
「これでは持たない。押し通せない」
「高額療養費制度」の負担引き上げ見送りも、政権のガバナンスの問題を露呈した。昨年12月に決定した8月からの負担上限額の引き上げ方針は、2月14日に長期治療が必要な患者の負担を据え置くとの修正がなされた。国会では、立憲民主党の野田佳彦代表らが衆院の予算審議の段階から、患者の声を聞かずに制度を変えるべきではない、8月からの引き上げを「凍結」すべきだと主張していた。
石破首相は「大切なセーフティーネットを将来にわたって堅持し、保険料負担の抑制につなげることが必要だ」と説明し、引き上げる意向を示したが、周辺に「この答弁では持たない。押し通せない」と弱音も吐く。
2月28日には8月から引き上げるが、26年以降は対応を再検討するとの2度目の修正案(財務省案)が示された。森山氏が前日27日に引き上げ見送りを提案したが、首相は、厚生労働省からの報告で患者団体も立民党も理解に至ったと判断し、森山氏の提案を退けたらしい、とされている。
見送りに向けて石破首相の背中を押したのは、公明党だった。斉藤代表が3月5日に首相官邸を訪れて「凍結」を進言したほか、6日の参院予算委員会で、谷合正明参院会長が「命にかかわることだ。多様な国民の声を聞いて判断してもらいたい」と申し入れ、首相が「丁寧な説明が十分でないとの反省は持っている」と応じていた。
3月7日朝、首相官邸で首相、林芳正官房長官、加藤勝信財務相、福岡資麿厚生労働相らが協議し、この場で見送りを決まったが、森山、小野寺両氏ら党執行部と事前の調整ができず、異議が出る場面もあったという。